任意後見人は親の家を売れる?代理権目録・監督人の選任・売る前に確かめること【法定後見で叔父の家を売った元・後見人が解説】

任意後見人は親の家を売れる?代理権目録と監督人の確認
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親が元気なうちに任意後見契約を結んであります。その親が施設に入り、誰も住まなくなった実家をどうにかしたい。任意後見人になっている自分が、親の代わりに家を売ってよいのか、家庭裁判所の許可は要るのか。そんな状況の方へ。

私は、認知症の叔父の成年後見人(法定後見)を3年務め、叔父の家を家庭裁判所の許可を取って売却しました。任意後見人になった経験はありません。この記事の任意後見の部分は、法律の条文をもとにした制度の説明で、体験ではありません。そのうえで、家の売却で家庭裁判所に書類を出した立場から、売る前に確かめる順番を書きます。

目次

結論:売れるかどうかは「契約書」と「監督人が選ばれているか」で決まる

任意後見人が家を売る前に確かめる3つの段階

任意後見人が親の家を売れるかどうかは、次の二つで決まります。

  1. 任意後見監督人が選ばれているか:選ばれる前は、まだ「任意後見人」ではなく「任意後見受任者」で、契約の効力も生じていません
  2. 代理権目録に不動産の売却が書かれているか:契約で任された範囲の外のことは、代理できません

私が通った法定後見では、本人が住んでいた家を売るのに家庭裁判所の許可が要りました。任意後見は仕組みが違います。条文を読む限り、同じ許可の規定は見当たりません。ただ、だから自由に売れるということではなく、別の確認事項があります。以下で順に書きます。

任意後見人になるのは、監督人が選ばれてから

任意後見契約法の定義では、任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選んだ時から効力を生じる旨の定めがある委任契約です。監督人が選ばれる前の契約の相手方は「任意後見受任者」、選ばれた後は「任意後見人」と呼ばれます(任意後見契約に関する法律2条、2026年11月2日にe-Gov法令検索で確認)。

また、監督人の選任は、契約が登記されていて、本人の判断能力が不十分な状況にあるときに、本人・配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者の請求で家庭裁判所が行います(同法4条1項、同日確認)。

つまり、契約書があっても、親が認知症になったその日から家を売れるわけではありません。まず、家庭裁判所に監督人を選んでもらう申立てが先です。契約だけ結んで安心していると、実家の売却を急ぎたいときに、この手順が抜けていたと気づくことがあります。

契約書の代理権目録に「不動産の売却」があるか

任意後見人が家を売る前に見る5つの確認事項

任意後見契約は、本人が受任者に任せる事務と代理権の範囲を、契約で決めます。法律の定義も、本人の生活、療養看護、財産の管理に関する事務の「全部又は一部」を委託し、その事務について代理権を付与する契約としています(任意後見契約に関する法律2条1号、2026年11月2日確認)。

ここが、売れるかどうかの分かれ目です。契約書につけた代理権目録に、不動産の売却や処分が書かれていなければ、任意後見人が家を売る権限があるとは言えません。「不動産の管理」とだけ書いてあるのか、「売却」まで書いてあるのかで、扱いが変わる可能性があります。

私は法定後見人として家を売ったので、任意後見の代理権目録を実際に読んで売った経験はありません。ただ、売却では買主側の不動産会社や司法書士も、売る人に権限があるかを確かめます。後見人側から権限を示せるよう、契約書と登記事項証明書を手元に揃えておく必要があります。

確かめること見る場所分からないとき
契約が公正証書で結ばれているか公正証書の原本・正本公証役場に問い合わせる
契約が登記されているか法務局の登記事項証明書法務局・司法書士に聞く
監督人が選ばれているか家庭裁判所の審判書家庭裁判所に聞く
売却が代理権の範囲に入っているか契約書の代理権目録司法書士・弁護士に読んでもらう
契約に追加の条件がないか契約書の条文同上

契約の条文に、売却のような大きな処分では監督人の同意を得るといった条件が書かれている場合もあります。契約書そのものを読んで確かめてください。

家庭裁判所の許可は要らない?法定後見との違い

法定後見では家の売却に家庭裁判所の許可が要り、約1か月だった

法定後見の成年後見人は、本人の居住の用に供する建物やその敷地を売却・賃貸などするとき、家庭裁判所の許可を得なければなりません(民法859条の3、2026年11月2日にe-Gov法令検索で確認)。私も叔父の家の売却で、上申書を出して許可を取りました。許可が出るまでは約1か月でした。裁判所ごとに違うので、これは私のときの話です。

一方、任意後見契約に関する法律を通して読むと、この居住用不動産についての許可の規定は見当たりません。その代わりに、任意後見監督人が任意後見人の事務を監督し、家庭裁判所に定期的に報告をすること、任意後見人と本人の利益が相反する行為では監督人が本人を代表することが定められています(同法7条1項、2026年11月2日確認)。

たとえば、任意後見人になった子が、親の家を自分で買い取る場合は、利益が相反する典型です。許可の有無とは別に、監督人が関わる場面になります。実際の運用は個別の事情で変わるので、売ると決めた段階で、監督人や司法書士に先に相談するのが安全です。

また、任意後見が始まったあとでも、本人の利益のため特に必要があると家庭裁判所が認めれば後見開始の審判がされることがあり、その審判を受けると任意後見契約は終了します(同法10条、同日確認)。「任意後見にしておけば、法定後見の話は一切出ない」とは言い切れません。

判断の基準:どこまで自分で進めて、どこから専門家に任せるか

全部を自分で調べ切る必要はありません。私は次のところで線を引くのが現実的だと考えています。

  1. 書類を揃える:契約書、登記事項証明書、監督人の選任の審判書。ここまでは家族でできます
  2. 代理権目録の読み方は自分で決めない:「管理」と「売却」の境目は、司法書士や弁護士に読んでもらって、聞いた内容を記録に残すのが基準です
  3. 売る必要があるかを整理する:施設費用の見込み、家の管理の負担、親本人の暮らしへの影響を、数字と一緒にメモする
  4. 監督人に事前に伝える:売る方針、売却先、価格の決め方を、契約の前に監督人へ報告・相談する
  5. 売却の実務は専門家に任せる:査定、契約書、登記は不動産会社・司法書士の仕事です

私が法定後見で家を売ったときも、売る理由を家庭裁判所に説明できるよう、費用の見込みを書き出しました。

任意後見は家庭裁判所の許可という関門がないぶん、「なぜ売ると判断したか」を後から説明できる記録が、本人と親族、監督人に対する後見人自身の備えになります。いつ、誰に、何を確認し、何を根拠に売ると決めたか。短くてよいので、日付と一緒に残してください。

これからの人へ:任意後見だけで足りるかを考える

まだ親が元気で、これから備える段階なら、任意後見と、家の管理や売却を任せる別の仕組みを、並べて考えておくと安心です。家族信託はその一つです。家族信託の相談窓口には、おやとこ(PR)のようなサービスがあります。自分の家の場合に何が向くかを聞いてみる、という使い方ができます。料金や対応範囲は公式サイトで確かめてください。

私自身は、任意後見も家族信託も使っていません。制度の違いはどちらを選ぶ?成年後見人と家族信託、費用や流れは家族信託の手続きの流れと費用の記事を参考にしてください。

よくある質問

任意後見契約を結んでいれば、すぐ家を売れますか?

すぐには売れません。契約の効力は、家庭裁判所が任意後見監督人を選んだ時から生じます。選ばれる前の受任者には、本人に代わって売る権限はありません。

任意後見人が家を売るとき、家庭裁判所の許可は要りますか?

民法859条の3の許可は、成年後見人(法定後見)についての規定です。任意後見契約に関する法律には、同じ許可の規定は見当たりません。ただ、契約の条件や監督人の関わり方で扱いが変わることがあるので、売る前に司法書士や弁護士、監督人に確かめてください。

契約を結んだのに、代理権目録に売却が入っていなかったら?

その契約のまま売却を進めるのは難しい可能性があります。本人にまだ契約を結べる判断力があるかどうかで、取れる方法が変わります。専門家に早めに相談してください。

親本人の判断力が落ちる前に、家を売っておけますか?

本人に契約の内容を理解して判断する力があるうちは、本人が売ることができます。ただ、判断力があるかどうかは自分たちで決めずに、医師や専門家に確かめてください。くわしい考え方は認知症の親の家は売れる?の記事に書いています。

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親の家の備えを、元気なうちに相談する

任意後見のほかに、家族信託などの方法を選べることがあります。家族信託の相談ができる「おやとこ」に、自分の家の場合はどうなるかを聞いてみるのも一つの方法です。

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※この記事は一般的な情報で、法律の助言ではありません。任意後見契約の内容や、売却の可否・手続きは個別の事情で変わります。契約書を持って、公証役場、家庭裁判所、司法書士・弁護士などの専門家にご相談ください。

この記事を書いた人:くじら99(元・成年後見人)
300km離れた認知症の叔父の成年後見人を、家庭裁判所に選ばれて、会社員のまま3年務めました。法律の専門家ではありません。家庭裁判所に出した書類や見積書など、記録が残っていることを書いています。運営者について

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