くじら99こんにちは。元・成年後見人のくじら99(@9jira99)です。
私は300km離れた叔父の成年後見人を3年間務めました。叔父は生涯独身で、子どもはいません。最後は施設で静かに亡くなりました。
家庭裁判所に最終報告を出し、管理していた財産を引き継いで、後見人の仕事は終わりです。ところが、死亡届、施設の退去、遺品の整理、未払い金の精算、そして先祖代々のお墓。叔父の死後に残った手続きは、そこから始まりました。後見人の肩書きがなくなった私は、甥という一人の親族として、有給休暇を使い果たしながら片付けていくことになりました。
あのとき何度も思ったことがあります。
「叔父が元気なうちに、死後のことを誰かに頼む契約を結んでいれば」
その契約が、この記事で扱う死後事務委任契約です。
最初にお断りしておくと、叔父はこの契約を結んでいませんでした。私自身も、契約を結んだ当事者(委任者)でも、引き受けた側(受任者)でもありません。この記事は、契約がなかった家で死後の手続きを背負った側から、死後事務委任契約の中身・費用・頼み先・限界を整理したものです。
この記事はプロモーションを含みます。
この記事でわかること
- 成年後見・任意後見では、なぜ死後の手続きができないのか
- 死後事務委任契約で頼めること・頼めないこと
- 費用の内訳(2025年10月の公証人手数料改定を反映)
- どこに頼むか(司法書士・行政書士・弁護士・社会福祉協議会・民間)
- 2026年6月に成立した改正社会福祉法で何が変わるか
- トラブルを防ぐ契約書の作り方
この記事を書いた人:くじら99(元 成年後見人)
遠方(300km以上)に住む認知症の親族のため、働きながら家庭裁判所に選任され成年後見人を務めた経験を持つ会社員。
免責事項
当サイトは個人の成年後見業務の実体験に基づく情報提供であり、法的なアドバイスを行うものではありません。個別具体的な手続きについては、弁護士・司法書士などの専門家や管轄の家庭裁判所等へご相談ください。
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1. 死後事務委任契約とは?後見人にできない死後の事務と必要性
死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後の手続きを、生きているうちに誰かに頼んでおく契約です。
人が一人亡くなると、葬儀や火葬、役所への届け出、住まいの片付け、公共料金や携帯電話の解約など、誰かがやらなければならない手続きが一斉に発生します。家族がいればその家族が担いますが、おひとりさまや、家族が遠方・高齢で頼れない場合、それを引き受ける人がいません。
「後見人がいるから大丈夫」と考える方もいます。私もかつてはそう思っていました。しかし、それは違います。
1-1. 成年後見・任意後見は死亡後に終了する|できないことと法律上の違い
後見人は本人の「代理人」です。代理権は本人の死亡で消滅します(民法111条1項1号)。任意後見も委任契約の一種なので、委任者(本人)の死亡で終わります(民法653条1号)。
つまり、亡くなった瞬間から、後見人は本人の財産にも手続きにも、原則として手を出せなくなります。財産は相続人のものになるからです。
私が経験した「後見人の権限が消えた後」を、立場ごとに整理するとこうなります。
| 立場 | 本人が生きている間 | 本人が亡くなった後 |
|---|---|---|
| 成年後見人 | 財産管理・契約の代理ができる | 権限は消滅。民法873条の2の限られた死後事務のみ(火葬・埋葬の契約などは家裁の許可が必要) |
| 保佐人・補助人 | 家裁が認めた範囲で同意・代理 | 権限は消滅。873条の2も適用されない |
| 任意後見人 | 契約で決めた範囲で代理 | 契約終了。死後の手続きはできない |
| 死後事務の受任者 | (何もしない) | 契約で決めた死後の手続きを実行できる |
| 相続人 | (権限なし) | 財産を引き継ぎ、相続手続きを行う |
例外として、2016年の民法改正で成年後見人に限り、一定の死後事務が認められるようになりました(民法873条の2)。
- 相続財産に属する特定の財産を保存するための行為
- 期限が来ている債務の弁済(入院費や施設の利用料など)
- 火葬・埋葬に関する契約の締結など、相続財産の保存に必要な行為(家庭裁判所の許可が必要)
ただし、これは相続人が財産を管理できるようになるまでのつなぎです。しかも相続人の意思に反することが明らかなときはできません。葬儀の内容を決める、家財を処分する、賃貸を解約する、お墓を片付ける。こうしたことは、この条文ではカバーされていません。保佐人・補助人・任意後見人には、この規定すら適用されません。
私の叔父の場合、葬儀は親族が中心になって進め、私は手配を手伝いました。お墓については、後見人である間は一切手を出せませんでした。お墓や仏壇は「祭祀財産」で、後見人の管理の対象外だからです。叔父が亡くなり、後見が終わってから、親族として一から墓じまいを進めました。お寺との離檀の話し合い、改葬許可の書類集め、閉眼供養の立ち会いまで、すべて有給休暇を使ってこなしました。
その顛末は成年後見終了後の死後事務とお寺との交渉術に書いています。
後見人がいても、死後の手続きの大部分は宙に浮く。 これが、死後事務委任契約が必要になる一番の理由です。
| 立場 | 本人が生きている間 | 本人が亡くなった後 |
|---|---|---|
| 成年後見人 | 財産管理・契約の代理ができる | 権限は消滅。民法873条の2の限られた死後事務のみ(火葬・埋葬の契約などは家裁の許可が必要) |
| 保佐人・補助人 | 家裁が認めた範囲で同意・代理 | 権限は消滅。873条の2も適用されない |
| 任意後見人 | 契約で決めた範囲で代理 | 契約終了。死後の手続きはできない |
| 死後事務の受任者 | (何もしない) | 契約で決めた死後の手続きを実行できる |
| 相続人 | (権限なし) | 財産を引き継ぎ、相続手続きを行う |
1-2. 死後事務委任契約で委任できる業務|葬儀・納骨・各種手続き・遺品処分
死後事務委任契約で頼める内容は、契約で自由に決められます。一般的には次のようなものです。国の「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(2024年6月)でも、死後事務の例としてほぼ同じ項目が挙げられています。
亡くなった直後
- 死亡の確認、病院・施設への駆けつけ、遺体の引き取り
- 親族や友人など、指定した人への連絡
- 死亡届の提出、火葬許可の手続き
葬儀・供養
- 葬儀社との打ち合わせ、葬儀・火葬の執り行い
- 納骨、永代供養、散骨などの手配
- お寺への連絡、法要の依頼
住まいと生活の後始末
- 賃貸住宅の明け渡し、大家・管理会社との連絡
- 遺品の整理・処分、ペットの引き渡し
- 電気・ガス・水道、携帯電話、インターネット、新聞などの解約
- 病院代・施設利用料・家賃などの精算
行政の手続き
- 健康保険・介護保険の資格喪失届、年金の受給停止
- 運転免許証やマイナンバーカードの返納
デジタル関係
- SNSアカウントの削除、パソコン・スマホのデータ消去
- ネットサービスやサブスクの解約
一方で、頼めないこともはっきりあります。財産を誰にどう分けるか、相続税の申告などです。これは第5章でくわしく扱います。
デジタル遺品は、見落とされがちなのに一番困る領域です。対策は死後にスマホを見られたくない人のデジタル終活にまとめています。
1-3. 遺言書・遺言と死後事務委任契約の違い|遺産相続と事務を分けて考える
よく混同されるのが遺言書です。役割がまったく違います。
- 遺言:自分の財産を、誰にどう残すかを決めるもの
- 死後事務委任契約:自分の死後の手続きを、誰にやってもらうかを決めるもの
遺言に「葬儀は家族葬で」「遺骨は海に撒いてほしい」と書いても、法律上の強制力はありません。遺言で法的な効力を持つのは、主に財産の分け方や認知など、法律で決められた事項だけです。しかも遺言書が開かれるのは、葬儀が終わった後であることも珍しくありません。
逆に、死後事務委任契約で「預金を甥に渡す」と決めることはできません。財産の分け方は遺言の領域です。
| 立場 | 本人が生きている間 | 本人が亡くなった後 |
|---|---|---|
| 成年後見人 | 財産管理・契約の代理ができる | 権限は消滅。民法873条の2の限られた死後事務のみ(火葬・埋葬の契約などは家裁の許可が必要) |
| 保佐人・補助人 | 家裁が認めた範囲で同意・代理 | 権限は消滅。873条の2も適用されない |
| 任意後見人 | 契約で決めた範囲で代理 | 契約終了。死後の手続きはできない |
| 死後事務の受任者 | (何もしない) | 契約で決めた死後の手続きを実行できる |
| 相続人 | (権限なし) | 財産を引き継ぎ、相続手続きを行う |
実務では、遺言(財産)+死後事務委任契約(手続き)をセットで作るのが基本です。さらに、生きているうちに判断能力が落ちたときに備えて任意後見契約も一緒に結ぶ形がよく使われます。
このとき、遺言で「遺言執行者」を指定し、同じ人を死後事務の受任者にしておくと、財産の払い戻しと手続きの支払いを一人で完結できます。
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2. 死後事務委任契約の費用相場|総額はいくら?


費用は大きく4つに分かれます。
- 契約書を作るときの費用(公正証書の手数料+専門家への作成報酬)
- 死後の手続きを実行してもらう報酬
- 実費(葬儀・納骨・遺品整理・解約などに実際にかかるお金)
- 預託金(2と3を支払うために、生前に預けておくお金)
「死後事務委任契約はいくら」と一言で答えにくいのは、3の実費が人によって大きく違うからです。順番に見ていきます。
2-1. 作成費用と公正証書の料金|契約書作成に発生する手数料の目安
死後事務委任契約は、法律上は口約束や私文書でも成立します。ただし、銀行や役所、相続人に対して「本人が本当にそう頼んだ」と示すために、公証役場で公正証書にするのが一般的です。
公正証書の手数料は、2025年10月1日に改定されました。死後事務委任契約に関係するのは次の点です。
- 委任者の死後に処理される委任契約の手数料は、通常の手数料の10分の5(半額)になりました
- 目的の価額を算定できない場合の基本手数料は13,000円です
- 正本・謄本の交付は、紙の場合1枚300円です
| 立場 | 本人が生きている間 | 本人が亡くなった後 |
|---|---|---|
| 成年後見人 | 財産管理・契約の代理ができる | 権限は消滅。民法873条の2の限られた死後事務のみ(火葬・埋葬の契約などは家裁の許可が必要) |
| 保佐人・補助人 | 家裁が認めた範囲で同意・代理 | 権限は消滅。873条の2も適用されない |
| 任意後見人 | 契約で決めた範囲で代理 | 契約終了。死後の手続きはできない |
| 死後事務の受任者 | (何もしない) | 契約で決めた死後の手続きを実行できる |
| 相続人 | (権限なし) | 財産を引き継ぎ、相続手続きを行う |
目的の価額をどう数えるか(報酬額や預託金を基準にするかなど)は、契約内容と公証人の判断で変わります。正確な金額は、事前に公証役場に確認してください。 公証人に自宅や病院まで来てもらう場合は、日当や交通費が加わります。
いずれにしても、公証役場に払う手数料は数千円〜数万円の範囲に収まることがほとんどです。費用の大部分を占めるのは、次の専門家報酬と実費です。
2-2. 専門家への報酬|司法書士報酬・行政書士・弁護士の相場を比較
専門家への報酬は、契約書を作るときと、死後に実行するときの2回に分かれます。
① 契約書の作成報酬
公正証書の原案づくりと公証役場との調整を頼む報酬です。事務所によりますが、数万円〜十数万円の幅があります。遺言や任意後見契約と一緒に頼むと、セットで割安になることがあります。
② 死後事務の執行報酬
実際に手続きをしてもらう報酬です。項目ごとに料金を決めている事務所・団体と、一括で決めている事務所・団体があります。
項目別の料金の一例として、ある死後事務の支援団体が公開している参考料金を紹介します。
| 立場 | 本人が生きている間 | 本人が亡くなった後 |
|---|---|---|
| 成年後見人 | 財産管理・契約の代理ができる | 権限は消滅。民法873条の2の限られた死後事務のみ(火葬・埋葬の契約などは家裁の許可が必要) |
| 保佐人・補助人 | 家裁が認めた範囲で同意・代理 | 権限は消滅。873条の2も適用されない |
| 任意後見人 | 契約で決めた範囲で代理 | 契約終了。死後の手続きはできない |
| 死後事務の受任者 | (何もしない) | 契約で決めた死後の手続きを実行できる |
| 相続人 | (権限なし) | 財産を引き継ぎ、相続手続きを行う |
この例でいうと、「病院に駆けつけてもらい、葬儀の喪主代行をしてもらい、納骨まで任せ、賃貸を明け渡してもらい、銀行・携帯など5件を解約してもらう」だけで、報酬は40万円を超えます。
司法書士・行政書士・弁護士で相場に明確な差があるわけではありませんが、弁護士は相続人との紛争対応まで見込める分、高めに設定されることが多いという傾向はあります。違いの詳細は第3章で扱います。
2-3. 実費・葬儀費用・納骨費用を含む総額|お金を用意する際の考え方
報酬とは別に、実際の手続きにかかるお金が必要です。
- 葬儀・火葬費用:火葬のみの直葬なら数十万円程度から。家族葬や一般葬ならさらに上がります
- 納骨・供養の費用:永代供養や合祀なら数万円〜数十万円。散骨も同程度
- 遺品整理・明け渡し:部屋の広さと物の量で大きく変わります。ワンルームで数万円、一戸建てなら数十万円以上
- 未払いの精算:最後の入院費、施設利用料、家賃、公共料金
参考になるのが公的サービスの預託額です。京都市社会福祉協議会の「単身高齢者万一あんしんサービス」では、葬儀・納骨費用として25万円を預けます(残置物の処分費用は別途見積もり)。これは身寄りのない方が、低額で最低限の葬送を行うための水準です。
総額の目安を試算するとこうなります。
| 立場 | 本人が生きている間 | 本人が亡くなった後 |
|---|---|---|
| 成年後見人 | 財産管理・契約の代理ができる | 権限は消滅。民法873条の2の限られた死後事務のみ(火葬・埋葬の契約などは家裁の許可が必要) |
| 保佐人・補助人 | 家裁が認めた範囲で同意・代理 | 権限は消滅。873条の2も適用されない |
| 任意後見人 | 契約で決めた範囲で代理 | 契約終了。死後の手続きはできない |
| 死後事務の受任者 | (何もしない) | 契約で決めた死後の手続きを実行できる |
| 相続人 | (権限なし) | 財産を引き継ぎ、相続手続きを行う |
「死後事務委任契約 お金がない」と検索される方が多いのは、この金額を見て不安になるからだと思います。お金に余裕がない場合の選択肢は、第3章の社会福祉協議会・自治体の支援で扱います。
2-4. 預託金の目安と清算・精算|余った財産の返還条件を確認する
預託金とは、死後事務の報酬と実費に充てるため、生前に受任者へ預けておくお金です。金額は、依頼する内容の見積もりに合わせて決めます。上の試算でいえば、数十万円〜150万円程度が一つの目安になります。
預託金には大きなリスクが一つあります。預けた相手が使い込む、または倒産することです。国のガイドラインでも、事業者に対して次のことが望ましいとされています。
- 預託金を事業者自身の運営資金と分けて管理する
- 定期的に利用者に管理状況を報告する
- 最も望ましいのは、信託銀行・信託会社との信託契約で保全すること
契約前に必ず確認すべきなのは、次の3点です。
- 預託金をどこで、誰の名義で管理するのか
- 死後に余った場合、誰に返すのか(相続人か、遺言で指定した人か)
- 生前に解約した場合、いくら戻るのか
預託金を預けずに、遺産から精算する方式を採っている事務所・団体もあります。この場合、遺言で遺言執行者を指定し、預金の払い戻しができるようにしておくことが前提になります。
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3. 依頼先はどこに頼む?死後事務委任契約を受任する専門家・事業者
依頼先は、大きく分けて5種類あります。
| 立場 | 本人が生きている間 | 本人が亡くなった後 |
|---|---|---|
| 成年後見人 | 財産管理・契約の代理ができる | 権限は消滅。民法873条の2の限られた死後事務のみ(火葬・埋葬の契約などは家裁の許可が必要) |
| 保佐人・補助人 | 家裁が認めた範囲で同意・代理 | 権限は消滅。873条の2も適用されない |
| 任意後見人 | 契約で決めた範囲で代理 | 契約終了。死後の手続きはできない |
| 死後事務の受任者 | (何もしない) | 契約で決めた死後の手続きを実行できる |
| 相続人 | (権限なし) | 財産を引き継ぎ、相続手続きを行う |
3-1. 司法書士・行政書士・弁護士の依頼先別にみる対応範囲と費用
死後事務委任契約の受任者になるのに、特別な資格は要りません。専門家であれば誰でも受けられます。違いが出るのは、死後事務と一緒に何を頼めるかです。
司法書士
- 不動産の相続登記まで一貫して対応できる
- 成年後見・任意後見の実務経験が豊富な人が多い
- 持ち家がある人、任意後見とセットで考えている人に向く
行政書士
- 契約書・遺言の原案作成が得意分野
- 料金が比較的抑えめな傾向
- ただし、家庭裁判所の手続きや登記、紛争の代理はできない
弁護士
- 相続人とのもめごとや、賃貸の大家との交渉まで代理できる
- 報酬は高めになりやすい
- 親族との関係が複雑な人、財産が多い人に向く
どの専門家でも、死後事務の実務(葬儀社との調整、遺品整理の立ち会いなど)を実際にやった経験があるかが一番大事です。契約書を作るのは得意でも、実際の執行はあまりやったことがない事務所もあります。
3-2. 社会福祉協議会・自治体の支援制度は利用可能?高齢者向けサービスの確認点
いくつかの自治体・社協では、すでに低額で死後の手続きを支援する事業を行っています。
- 対象:65歳以上のひとり暮らし、市民税非課税、預貯金350万円以下(令和7年度から)など
- 内容:定期的な安否確認、亡くなった際の葬儀・納骨・家財処分
- 預託金:葬儀・納骨費用として25万円
- 対象:ひとり暮らしで頼れる身寄りがなく、月収18万円以下・預貯金250万円以下程度など
- 内容:低額で生前契約を受ける協力葬儀社の紹介、プランの保管、安否確認の訪問
そして大きな動きとして、2026年6月19日に改正社会福祉法が成立しました。
身寄りのない高齢者を支援する事業が、新たに第2種社会福祉事業として位置づけられました。日常の金銭管理や見守り、入院・入所の手続き支援に加えて、葬儀・納骨・家財処分の契約手続きや行政への届け出といった死後事務の支援が、国の福祉の枠組みに入ります。主な担い手は社会福祉協議会などで、段階的に施行され、全面的な運用は2028年ごろの見込みです。
制度の考え方は、資力の少ない人は公的な支援、資力のある人は民間サービスという二階建てです。まだ全国どこでも使えるわけではなく、自治体によって対応はまちまちです。
確認すべきポイントは次の3つです。
- お住まいの自治体・社協に、死後事務を支援する事業があるか
- ある場合、収入・預貯金・年齢などの利用条件に当てはまるか
- 当てはまらない場合、どこを紹介してもらえるか
相談先は、市区町村の高齢者福祉の窓口、社会福祉協議会、地域包括支援センターです。
3-3. 身元保証事業者・協会・イオンなど民間サービスを比較するポイント
民間では、身元保証・生活支援・死後事務をまとめて引き受ける事業者が増えています。国のガイドラインでは「高齢者等終身サポート事業者」と呼ばれています。一般社団法人、NPO法人、葬儀社系、士業グループ系などさまざまです。イオンライフ(イオンのお葬式)のように、葬儀大手が身元保証や終活のサポートを案内している例もあります。
民間サービスの強みは、入院・施設入所時の身元保証から死後の手続きまで一か所で頼めることです。身元保証は、改正社会福祉法の新しい公的事業でも対象外とされています。入院や施設入所で保証人を求められる方にとって、民間サービスは現実的な選択肢です。
一方で、国民生活センターや消費者庁も、この分野の契約トラブルに注意を呼びかけています。比較するときは、次の点を必ず確認してください。
- ガイドラインに沿った運営をしているか(重要事項説明書を交付するか、預託金を分けて管理しているか)
- 料金体系が明確か(入会金・月会費・預託金・追加料金)
- 遺贈や死因贈与を契約の条件にしていないか(ガイドラインでも避けるべきとされています)
- 運営の継続性(設立年数、受任件数、担当者が一人でないか)
3-4. 無料相談の活用方法|事務所選びで確認したい専門性と料金体系
多くの事務所・事業者が初回の無料相談を受け付けています。1か所で決めず、少なくとも2か所で話を聞いて比べてください。
無料相談で聞くべきことは次のとおりです。
- 死後事務を実際に執行した件数はどのくらいか
- 担当者が亡くなったり辞めたりしたとき、誰が引き継ぐのか
- 見積もりは項目別に出してもらえるか
- 預託金はどこで、どう管理するのか
- 遺言・任意後見とセットで頼んだ場合の費用
この5つにすらすら答えられるかどうかで、事務所の実務経験はかなり見分けられます。
身元保証から死後の手続きまで、一つの窓口で相談したい方へ
入院や施設入所の身元保証、生前の見守り、亡くなった後の手続きまでを、別々の事務所に頼むのは負担が大きいものです。「終活と相続のまどぐち」は、弁護士法人グループが運営する相談窓口で、身元保証から死後事務・相続までをまとめて相談できます。
いきなり契約する必要はありません。自分の場合に何が必要で、いくらかかるのか。その見積もりをもらうための1か所目として使ってください。
※東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県にお住まいの方が対象です。それ以外の地域の方は、お住まいの社会福祉協議会、または地域の司法書士・行政書士事務所にご相談ください。
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4. おひとりさま・家族がいても必要?契約を検討すべきケース


4-1. おひとりさまで親族に頼めない場合|安心して死後を任せるための対策
死後事務委任契約が最も必要なのは、配偶者も子もいない、いわゆるおひとりさまです。
叔父はまさにこのケースでした。身近な親族は甥の私だけで、しかも300km離れていました。引き受ける人がいなければ、遺体は自治体が火葬しますが(墓地埋葬法9条)、部屋の片付けや財産の整理は自動的には進みません。
私の場合は、後見人として3年間叔父の生活と財産を見てきたので、亡くなった後の後始末も引き受けることができました。これは、たまたまそういう立場にいたからにすぎません。
おひとりさまにとって死後事務委任契約は、「誰かに迷惑をかけないため」というより、「自分の望む最期を、確実に実行してもらうため」の契約です。
孤独死で発見が遅れた場合の後始末の流れは、孤独死の後始末は誰がやる?にまとめています。
4-2. 家族や相続人がいても依頼するケース|負担軽減と希望の実現
家族がいても、死後事務委任契約を検討する価値があるケースがあります。
- 子どもが遠方に住んでいる:私のように、300km離れて有給休暇を使い果たす生活を子どもにさせたくない
- 配偶者も高齢:残された配偶者に、手続きの負担をかけたくない
- 家族と疎遠・関係が悪い:家族に頼みたくない、頼めない
- 葬儀や供養に特別な希望がある:散骨したい、宗教的な事情がある、家族と考えが違う
- 内縁のパートナーがいる:法律上の家族ではないため、手続きの権限がない
特に最後のケースは重要です。内縁の配偶者や事実婚のパートナーは相続人ではないため、銀行や役所で手続きを断られることがあります。死後事務委任契約を結んでおけば、受任者として手続きを進められます。
4-3. 入院・施設入居・終身の身元保証とセットで検討する場合
施設入所のとき、多くの施設が身元保証人(身元引受人)を求めます。ここで知っておいてほしいのは、後見人は本人の代理人であって、身元保証人(連帯保証人)の役割は引き受けられないという点です。後見人がついていても、保証人の問題は別に残ります。
身元保証人が求められる理由の一つは、亡くなったときの遺体の引き取りと、部屋の明け渡しです。つまり施設側が心配しているのは、まさに死後事務です。
身元保証サービスの多くは、死後事務をセットにしています。施設や病院に出す書類と、死後の手続きを一つの事業者にまとめると、連絡が一本化されて楽になります。
施設探しそのものに悩んでいる方は、老人ホーム探しをプロに任せる方法も参考にしてください。
4-4. 生前に判断しておきたい条件|財産、遺産、相続人との関係を整理する
死後事務委任契約を結ぶ前に、次のことを整理しておくと、専門家への相談がスムーズになります。
- 相続人は誰か(配偶者、子、親、兄弟姉妹、甥姪)
- 相続人との関係(連絡がとれるか、協力してもらえるか)
- 財産の概要(預貯金、不動産、保険、借金)
- 住まい(持ち家か賃貸か、施設か)
- 葬儀・供養の希望(形式、宗教、お墓の有無)
- お墓の状況(承継者はいるか、墓じまいが必要か)
そして何より大切なのは、判断能力があるうちにしか契約できないということです。認知症が進んでからでは、この契約は結べません。私の叔父がそうでした。
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5. 死後事務委任契約で依頼・執行できること、できないこと
| 分類 | 死後事務委任契約で頼める | 頼めない(別の手段が必要) |
|---|---|---|
| 葬送 | 葬儀・火葬・納骨・散骨の手配、お寺への連絡 | — |
| 届出 | 死亡届の提出の代行、各種の資格喪失届 | 死亡届の「届出人」になること(戸籍法で決まった人のみ) |
| 住まい | 賃貸の明け渡し、遺品整理、公共料金・携帯の解約 | 価値のある遺品を相続人に無断で処分すること |
| お金 | 預託金からの支払い、未払い金の精算 | 預金の払い戻し(相続人か遺言執行者の手続きが必要) |
| 財産 | — | 遺産の分け方を決める(遺言で) |
| 相続 | — | 遺産分割、相続放棄、相続登記、相続税の申告 |
5-1. 死亡届、火葬、葬儀、埋葬・納骨の手続きと希望の履行
葬儀・火葬・納骨は、死後事務委任契約の中心です。形式(直葬・家族葬・一般葬)、宗教、呼ぶ人、遺影、納骨先まで、細かく指定できます。



注意が必要なのが死亡届です。
死亡届を出せる人(届出人)は戸籍法で決まっていて、同居の親族、その他の同居者、家主・地主、親族、後見人・保佐人・補助人、任意後見人などに限られます。死後事務の受任者であるというだけでは、届出人にはなれません。
実務では、届出人の欄は親族や家主、任意後見人などに記入してもらい、受任者は役所への提出を代行する形をとることが多いです。任意後見契約もセットで結んでおくと、任意後見人(任意後見受任者を含む)として届出人になれる余地が広がります。
また、お墓についても事前に整理しておく必要があります。お墓や仏壇は祭祀財産といって、普通の相続財産とは別に、祭祀を主宰する人が引き継ぎます。墓じまいまで頼みたい場合は、承継者を誰にするかを遺言で指定しておくと、手続きが進めやすくなります。
墓じまいの費用負担については墓じまいの費用は誰が払う?で整理しています。
5-2. 住居の明渡し、ライフライン解約、遺品整理・処分はどこまで可能か
賃貸住宅の明け渡し、公共料金や携帯電話の解約、遺品の整理・処分は、契約で頼めます。
ただし、ここには法律上のグレーゾーンがあります。遺品は相続財産です。価値のある物を受任者が勝手に処分すると、相続人から「財産を処分された」と言われるおそれがあります。
トラブルを防ぐために、契約書には次のことを書いておきます。
- 処分してよい物の範囲(「家財道具一切」なのか、「貴重品を除く」のか)
- 貴重品や形見の扱い(誰に渡すか)
- 処分費用の支払い方(預託金から、など)
相続人が相続放棄を考えている場合は、さらに慎重になる必要があります。相続人が遺品を処分すると相続放棄ができなくなることがあるためです。この点は相続放棄しても遺品整理はできる?でくわしく書いています。
【PR】遺品整理・明け渡しの費用を先に知っておくには
死後事務委任契約の預託金を決めるとき、一番読みにくいのが遺品整理と明け渡しの費用です。部屋の広さと物の量で、数万円から数十万円まで変わります。「遺品整理110番」は全国対応の紹介サービスで、見積もりは無料です。生前の見積もりにも使えます。
5-3. 相続、遺産分割、相続税申告・税務は委任できる?専門家との連携が必要な業務
相続に関することは、死後事務委任契約では頼めません。
- 遺産分割:相続人全員が話し合って決めるもの。受任者が決めることはできません
- 相続放棄:各相続人が自分で判断するもの
- 相続税の申告・準確定申告:相続人の義務。税務の代理は税理士の業務です
- 相続登記:相続人が行うもの(司法書士に依頼可能)
死後事務の受任者ができるのは、あくまで手続きの実行です。財産を分けることはできません。
財産の行き先を決めたいなら、遺言を作り、遺言執行者を指定してください。相続人が相続手続きを担うことになる場合は、専門家にまとめて頼む方法もあります。
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戸籍の収集、預貯金の名義変更、相続登記、相続税の申告。これらは死後事務の受任者ではなく、相続人が行う手続きです。「相続アシスト」は税理士・司法書士・弁護士が連携して、相続手続きをまとめて代行するサービスで、オンライン・郵送で全国に対応しています。
5-4. 財産管理・不動産処分で注意すべき権限の限界と相続人への対応
死後事務委任契約は「委任」です。受任者の権限は、契約書に書かれたことだけです。
- 預金の払い戻し:銀行は通常、相続人か遺言執行者の手続きを求めます。受任者だから引き出せる、とは限りません
- 不動産の売却:相続人か遺言執行者でなければできません
- 車の処分:名義変更や廃車には、相続人の書類が必要になるのが一般的です
私は後見人として、叔父の預金を1円単位で管理していました。それでも、叔父が亡くなった瞬間に、その口座は私が触れてはいけないものになりました。死後の財産を動かせるのは、相続人と遺言執行者だけです。
だからこそ、死後事務の報酬や実費は、預託金として生前に預けておくか、遺言で遺言執行者を指定して、遺産から払えるようにしておく必要があります。
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6. トラブルを防ぐ死後事務委任契約書の作成方法
6-1. 契約書に記載すべき委任の範囲、報酬、実費、預託金と精算方式
契約書には、最低限次の項目を入れます。
- 委任する事務の範囲(できるだけ具体的に。「葬儀一切」より「〇〇葬儀社で家族葬、参列は△△まで」)
- 報酬の額と支払い時期
- 実費の扱い(見積もり、上限の有無)
- 預託金の額・管理方法・精算方法
- 余った預託金の返還先
- 受任者が死亡・辞任した場合の扱い
- 委任者が亡くなっても契約が終わらないこと(次項)
- 解約の条件
7が大事です。民法では、委任は委任者の死亡で終わるのが原則です(民法653条1号)。ただし最高裁は、委任者の死後の事務を頼む契約は、委任者が亡くなっても終わらない合意を含んでいると判断しています(最高裁平成4年9月22日判決)。それでも争いを避けるため、「委任者の死亡によって本契約は終了しない」と明記しておくのが実務の定石です。
6-2. 公正証書で作成するメリット|本人の意思と契約の有効性を残す
公正証書にするメリットは次のとおりです。
- 本人の意思で結んだことが証明しやすい:公証人が本人確認と意思確認をします
- 原本が公証役場に保管される:紛失や改ざんの心配がない
- 相続人や銀行に示しやすい:私文書より信用される
2025年10月の改定で、死後事務委任契約の公正証書手数料は半額になりました。費用面のハードルは下がっています。
6-3. 受任者の不履行・費用の不足・親族とのトラブルを防ぐ対策
① 受任者が約束を守らない・先に亡くなる
個人に頼む場合、受任者が先に亡くなったり、病気になったりするリスクがあります。法人に頼む、予備の受任者を決めておく、のどちらかを検討してください。
② 預託金が足りない
物価や葬儀費用の上昇で、預託金が足りなくなることがあります。足りない場合にどうするか(遺産から払う、受任者が立て替えない、など)を契約書に書いておきます。
③ 親族から文句が出る
相続人から「なぜ他人に頼んだのか」「葬儀のやり方が気に入らない」と言われることがあります。
これを防ぐ一番の方法は、生きているうちに、相続人に契約を結んだことを伝えておくことです。本人の意思がはっきり伝わっていれば、多くのもめごとは起きません。伝えにくい関係なら、契約の存在と受任者の連絡先を書いたメモを、遺言と一緒に残しておいてください。
6-4. 解約・変更は可能?生前の見直し、返還、死亡後の清算ルール
生きているうちなら、委任者はいつでも解約できます(民法651条)。ただし、相手に不利な時期の解約などでは、損害を賠償しなければならない場合があります。解約時の返金額(預託金、作成報酬)は契約書で確認しておきましょう。
内容の変更も可能です。住まいが変わった、葬儀の希望が変わった、受任者を変えたい。こうした場合は契約を作り直します。5年に1度くらいは見直すのがおすすめです。
死亡後の清算は、受任者が相続人(または遺言執行者)に対して、何にいくら使ったかを報告し、余った預託金を返すことで完了します。
後見人として最後の計算書を1円単位で合わせた経験から言うと、領収書と記録がすべてです。受任者が記録をきちんと残すかどうかも、依頼先を選ぶ基準にしてください。
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7. 費用を抑えつつ安心して依頼するための比較・判断基準
7-1. 見積もりで比較すべき料金、報酬、実費、預託金、追加費用の内訳
見積もりは2か所以上から取り、次の項目で比べてください。
- 契約書作成の報酬(公正証書の手数料を含むか)
- 死後事務の執行報酬(項目別か一括か)
- 実費の見込み(葬儀、納骨、遺品整理など)
- 預託金の額と管理方法
- 入会金・年会費・月会費の有無
- 追加費用が発生する条件
- 解約時の返金ルール
「一式〇〇万円」とだけ書かれた見積もりは比べられません。項目ごとに出してもらってください。
7-2. 安さだけで選ばない|受任実績、執行体制、事業者の継続可能性を確認
死後事務委任契約は、契約してから実行されるまで、10年、20年かかることもある契約です。その間に事業者がなくなっていたら、契約は意味を失います。
見るべきポイントは次の3つです。
- 受任実績:実際に死後事務を執行した件数
- 執行体制:担当者が一人ではなく、チームで対応しているか
- 継続性:設立からの年数、預託金を信託で守っているか
料金が安いことより、20年後も存在していそうかを重視してください。
7-3. 依頼前に家族・親族・相続人へ共有したい内容とトラブル予防
契約を結んだら、次のことを家族や相続人に共有しておきましょう。
- 死後事務委任契約を結んだこと
- 受任者の名前と連絡先
- 契約書(公正証書)の保管場所
- 遺言があるかどうか、遺言執行者は誰か
- 葬儀・供養の希望
叔父の家で、私は通帳も権利証も見つけられず、ゴミの山の中を探し回りました。「どこに何があるか」を誰かが知っているだけで、残された人の負担は大きく変わります。
死後事務委任契約 チェックリスト
□ 判断能力があるうちに動いている
□ 相続人が誰か、関係はどうかを整理した
□ お住まいの社会福祉協議会・自治体に支援事業があるか確認した
□ 2か所以上から、項目別の見積もりを取った
□ 死後事務を実際に執行した経験があるか確認した
□ 預託金の管理方法(分別管理・信託)を確認した
□ 遺贈や死因贈与が契約の条件になっていないか確認した
□ 「委任者の死亡で契約が終わらない」と契約書に書いてある
□ 余った預託金の返還先が決まっている
□ 遺言(遺言執行者の指定)も一緒に作った
□ 任意後見契約とのセットを検討した
□ 契約したことと保管場所を、家族・相続人に伝えた
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8. 死後事務委任契約の費用に関するよくある質問
8-1. 死後事務委任契約は誰に頼むのがよい?司法書士・行政書士・弁護士の選び方
A. 判断の目安は次のとおりです。
- 持ち家があり、相続登記まで一貫して頼みたい → 司法書士
- 費用を抑えて、契約書と遺言を整えたい → 行政書士
- 相続人とのもめごとが予想される、財産が多い → 弁護士
- 収入・預貯金が少ない → まず社会福祉協議会・自治体に相談
- 入院・施設の身元保証もまとめて頼みたい → 身元保証・終身サポート事業者
8-2. 費用はいつ支払う?預託金が不足した場合と残金返還の扱い
A. 契約書の作成費用は契約時に、執行報酬と実費は死後に支払うのが一般的です。死後の支払いには、生前に預けた預託金を使うか、遺言執行者が遺産から支払います。
預託金が足りない場合は、遺言執行者が遺産から支払うか、相続人に請求することになります。余った場合は相続人(または遺言で指定した人)に返されます。どちらの場合も、契約書にルールを書いておくことが大切です。
8-3. 任意後見契約と同時に作成すべき?作成のタイミングと必要書類
A. 同時に作成することをおすすめします。
- 任意後見契約:生きているうちに判断能力が落ちたときに備える
- 死後事務委任契約:亡くなった後の手続きに備える
この2つは、ちょうど生前と死後のバトンタッチの関係にあります。同じ人に頼んでおけば、判断能力の低下から亡くなった後まで、切れ目なく任せられます。ここに遺言を加えると、財産の行き先まで決められます。
作成のタイミングは、判断能力がしっかりしているうちです。必要書類は公証役場や依頼先によって異なりますが、一般的には本人の印鑑登録証明書と実印(または運転免許証などの本人確認書類)、受任者の本人確認書類などです。
Q. 死後事務委任契約は自分でも作れますか?
A. 作れます。ただし、受任者を誰にするか、預託金をどう管理するかなど、専門的な判断が必要な部分が多いため、少なくとも一度は専門家に相談することをおすすめします。
Q. 家族に頼む場合も契約書は必要ですか?
A. 家族が相続人なら、多くの手続きは相続人として行えます。ただし、相続人ではない甥・姪、内縁の配偶者、友人などに頼む場合は、契約書がないと手続きを断られる場面があります。窓口では「相続人の方ですか」と確認されるのが普通です。本人の意思を示す書面があるかどうかで、話の進み方が変わります。
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まとめ|後見人の仕事が終わった後に、私が一番ほしかったもの
- 成年後見も任意後見も、本人が亡くなった時点で終わる
- 後見人ができる死後事務は、民法873条の2のごく限られた範囲だけ
- 死後事務委任契約は、亡くなった後の手続きを生前に頼んでおく契約
- 財産の分け方は遺言、手続きは死後事務委任契約。セットで作るのが基本
- 公正証書の手数料は2025年10月から半額に
- 費用は、作成費用+執行報酬+実費で、数十万円〜100万円超が一般的
- お金に余裕がない方は、まず社会福祉協議会・自治体へ。2026年6月の改正社会福祉法で、公的支援の枠組みが広がる
- 預託金は、分けて管理されているか、信託で守られているかを必ず確認
- 契約できるのは、判断能力があるうちだけ
叔父の後見人を終えたとき、私の手元に残ったのは、最終報告書の控えと、誰が引き受けるのか決まっていない手続きの山でした。
もし叔父が元気なうちに、死後のことを誰かに頼む契約を結んでいたら。死亡届を誰が出すのか、どこのお寺に連絡するのか、遺骨をどこに納めるのか。それが紙に書かれていれば、私はもっと落ち着いて叔父を見送れたと思います。
自分のためにも、残される誰かのためにも、判断能力があるうちに動いてください。
「まだ早い」と思っている今が、一番いいタイミングです。
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後見が終わった後に何が残るのか。死後の手続きの実体験をまとめています。
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くじら99(元・成年後見人)
300km離れた認知症の叔父のため、会社員として働きながら家庭裁判所に選任され、成年後見人を3年間務めました。叔父の死後は親族として、死亡届、施設の退去、遺品整理、墓じまいまでを引き受けました。「後見人の仕事が終わった後」に何が残るかを、体験者の立場から記録しています。
参考にした公的情報
- 民法(第111条、第651条、第653条、第873条の2、第897条)
- 戸籍法(死亡届の届出義務者・届出資格者)
- 墓地、埋葬等に関する法律 第9条
- 最高裁判所 平成4年9月22日判決
- 日本公証人連合会「2025年10月1日から公正証書の手数料が変わります」
- 公証人手数料令の一部改正(令和7年10月1日施行)
- 内閣官房ほか「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(令和6年6月)
- 消費者庁「いわゆる『高齢者等終身サポート事業』の利用に関する注意点」
- 京都市「単身高齢者万一あんしんサービス」
- 横須賀市「エンディングプラン・サポート事業」
- 改正社会福祉法(2026年6月19日成立)
※当サイトは個人の実体験に基づく情報提供であり、法的助言ではありません。契約内容・費用・手数料は個別の事情や改定により変わります。具体的な手続きは、公証役場、弁護士・司法書士・行政書士等の専門家、お住まいの自治体・社会福祉協議会へご確認ください。本ページのリンクには広告(PR)を含みます。









