実家の名義が、亡くなった親のままになっている。相続登記が義務になったと聞いたけれど、自分の場合はいつまでに何をすればいいのか分からない。そんな状況の方へ。
先に私の立場を書きます。私は認知症の叔父の成年後見人を3年務めましたが、叔父の相続手続きそのもの(預金の解約や不動産の名義変更など)はしていません。経験しているのは、その前の段階の、後見人としての手続きまでです。叔父の家は、後見人として家庭裁判所の許可を取って売却しました。ただし、それは叔父が生きている間の話で、相続登記の体験ではありません。ですので、この記事は法律と法務省の公式情報をもとにした整理です。
全部を自分で完璧にやるのが正解、とは考えていません。期限を確かめ、どこまで自分で進め、どこから専門家に任せるかを決めて、その理由を記録に残す。その線引きの話をします。
結論:相続登記の義務化は、期限と「できない場合の逃げ道」を先に押さえる
- これから相続する人:不動産を相続したと知った日から3年以内に登記を申請します
- 以前に相続して、まだ登記していない人:令和9年(2027年)3月31日が期限です。今日(2026年11月5日)から、あまり時間がありません
- 話し合いがまとまらない・相続人が多い人:期限内に、まず相続人申告登記という簡易な申出をする方法があります
正当な理由なく期限を過ぎると、10万円以下の過料の対象になります。ただし、過料は裁判所が個別に決めるものです。慌てて自己判断で動く前に、法務局か司法書士に自分の場合を聞くのが確実です。
期限と過料:公式の情報

| 場面 | 期限・内容 |
|---|---|
| 相続で不動産を取得したとき(遺言を含む) | 取得したと知った日から3年以内に相続登記を申請する |
| 遺産分割がまとまったとき | 遺産分割の日から3年以内に、その結果に基づく登記を申請する |
| 令和6年(2024年)4月1日より前に相続し、まだ登記していないとき | 令和9年(2027年)3月31日まで |
| 正当な理由なく申請しなかったとき | 10万円以下の過料(裁判所が決める) |
「相続したと知った日」は、親が亡くなったことと、自分がその不動産を相続すると分かったことの両方を知った日が目安になります。具体的な日付の数え方は事情で変わるので、迷うときは法務局の相談窓口で聞いてください。
法務省のQ&Aでは、正当な理由の例として、次のようなものが挙げられています(確認日 2026年11月5日)。
- 相続人が非常に多く、戸籍の収集や相続人の把握に多くの時間がかかる
- 遺言の有効性や遺産の範囲が相続人の間で争われ、不動産の帰属が決まらない
- 申請する人に重い病気などの事情がある
- 経済的に困っていて、登記の費用を負担できない
これは例で、当てはまれば必ず免除されるという意味ではありません。「放っておいてよい理由」ではなく、「動けない事情があるときは、その事情を説明できるようにしておく」と読むのが安全です。
遺産分割がまとまらないときは相続人申告登記

3年以内に話し合いがまとまりそうにない場合のために、相続人申告登記という制度があります。法務省のQ&Aでは、次のように説明されています(確認日 2026年11月5日)。
- 登記簿上の所有者の相続人であることを、3年以内に登記官へ申し出る制度
- 相続人の一人が、単独で申し出ることができる
- 申し出た人についてだけ、申請義務を果たしたものとみなされる
- 権利関係をはっきりさせる登記ではないので、売却や抵当権の設定をするときには、あらためて相続登記が必要
- 遺産分割がまとまったあとの登記義務は、この申出では果たせない
つまり、相続人申告登記は期限に間に合わせるための「つなぎ」です。家を売りたい、貸したいという段になれば、結局は相続登記が要ります。相続人の中に認知症の人がいて話し合いが進まないときの考え方は、後見人がいる相続・相続人に認知症の人がいるときの進め方にまとめました。
まだ登記していない実家を、どう確かめるか

私は相続登記をしていないので、実際にやった手順としては書けません。ここは、手続きを整理するときの確認項目の提案です。
- 名義が誰のままか:登記事項証明書を法務局で取り、今の名義人を確かめる
- いつ相続したか:令和6年4月1日より前なら、期限は令和9年3月31日
- 相続人は誰か:戸籍をたどる。ここに時間がかかる場合が多い
- 遺産分割の話は進んでいるか:まとまっていなければ、相続人申告登記を考える
- その家をどうするか:住む・貸す・売る・手放す。売るなら登記が先に要る
手放すことまで考えているなら、空き家が売れない理由と手放す方法も参考になります。相続放棄を考えているなら、登記より先に期限(相続の開始を知った時から3か月)が来ます。放棄の前に家を処分しないよう、相続放棄しても遺品整理はできる?も読んでください。
判断の基準:自分で進める範囲と、任せる範囲
不動産の名義変更(登記の申請)は、司法書士が業務として扱える手続きです(司法書士法3条)。自分でやることもできますが、相続人が多い、戸籍が遠方にある、平日に動けない、といった事情があれば、任せるほうが合う場合もあります。
私が大事だと考えているのは、どちらを選んでも、何を基準に判断したかを記録に残すことです。期限が近い手続きは、あとで家族に聞かれたときに説明できるメモがあると助かります。例えば次のような形です。
| 残すこと | 書き方の例 |
|---|---|
| 確かめた日と中身 | ○月○日、登記事項証明書を取得。名義は父のまま |
| 期限の計算 | 相続したのは令和5年。令和9年3月31日までに登記が必要 |
| 相談したこと | ○月○日、司法書士事務所に電話。必要書類と見積もりを聞いた |
| 任せた範囲と理由 | 登記は司法書士に依頼。理由は、相続人が5人で戸籍集めに時間がかかるため |
| 見送ったこと | 遺産分割はまとまらず、先に相続人申告登記をした。理由は、期限に間に合わせるため |
手続きをまとめて相談したいとき
くじら99戸籍集めと登記の両方を自分で回りきれない。
そう感じる方は、亡くなったあとの相続手続きを相談できるnocos(ノコス)(PR)に、自分の場合に何が必要かを聞く方法があります。![]()
![]()
ほかにも、相続の手続き代行を扱う相続アシスト(PR)のようなサービスもあります。
PR
相続登記の期限、まずは相談から
名義がそのままの実家があるときは、手続きの相談ができる窓口に、自分の場合の進め方を聞いてみるのも一つの方法です。
よくある質問
相続登記をしないと、すぐ過料になりますか?
期限を過ぎても、すぐに過料が科されるとは限りません。過料は、正当な理由がないときに、10万円以下の範囲で裁判所が決めるものです(法務省Q&A、確認日 2026年11月5日)。期限が近い、または過ぎてしまった場合は、早めに法務局か司法書士に聞いてください。
義務化の前に相続した実家も対象ですか?
令和6年4月1日より前に相続して、まだ登記していない不動産も対象です。期限は令和9年3月31日までです(法務省Q&A、確認日 2026年11月5日)。
遺産分割がまとまっていなくても、申請の義務は生じますか?
相続したと知った日から3年以内の義務は、遺産分割の成否とは別にかかります。まとまらない場合は、相続人申告登記で義務を果たす方法があります。その後に遺産分割がまとまったら、その日から3年以内に、結果に基づく登記が必要です。
相続人の中に認知症の人がいるときは?
遺産分割の話し合いは、その人が内容を理解できないと進められません。成年後見制度を使う場合の考え方は、認知症の親の家は売れる?や後見人がいる相続で触れています。個別の判断は、家庭裁判所や専門家に相談してください。
被後見人が亡くなったあとの手続きは?
後見人の権限は亡くなった時点で終わり、その後の相続の手続きは相続人が行います。後見人の役割は被後見人が死亡したら後見人がやることにまとめています。
あわせて読みたい
※この記事は一般的な情報で、法律・税務の助言ではありません。期限や必要な手続きは、個別の事情で変わります。判断に迷う場合は、法務局、司法書士、弁護士、家庭裁判所などの専門家にご相談ください。
この記事を書いた人:くじら99(元・成年後見人)
300km離れた認知症の叔父の成年後見人を、家庭裁判所に選ばれて、会社員のまま3年務めました。法律の専門家ではありません。家庭裁判所に出した書類や見積書など、記録が残っていることを書いています。運営者について









