家族が亡くなって、役所や銀行の手続きが次々に出てくる。相続の手続きを誰かに頼みたいけれど、司法書士なのか、行政書士なのか、税理士なのか分からない。そんな状況の方へ。
先に私の立場を書きます。私は認知症の叔父の成年後見人を3年務めましたが、叔父の相続手続きそのもの(預金の解約や名義変更など)はしていません。経験しているのは、その前の段階の、後見人としての口座の手続きまでです。ですので、この記事は相続手続きの体験談ではなく、法律の条文と公的な情報をもとにした「頼み先の整理」です。
全部を丁寧に自分でやるのが正解、とは考えていません。何を見て、どこから任せるかを決めて、その理由を記録に残す。その線引きの話をします。
結論:何を終わらせたいかで、頼み先が変わる
- 不動産の名義を変えたい:登記は司法書士の業務。まず司法書士に聞く
- 相続税の申告が必要そう:申告は税理士の業務。期限が短いので早めに聞く
- 家族の間でもめている:紛争の交渉は弁護士の領域。窓口サービスや他の士業に頼む前に弁護士へ
- 何から手をつけるか分からない、戸籍集めや銀行の手続きが多い:手続き全体の窓口になるサービスに、まず相談してみる
| 頼み先 | 法律上、主に扱えること | 向く場面 | 使った/調べた | 公式 |
|---|---|---|---|---|
| 自分で | すべて(ただし時間がかかる) | 相続人が少なく、財産が単純で、平日に動ける | 使った:叔父の口座の手続きまで(相続手続きそのものはしていない) | 金融機関・市区町村・法務局の窓口 |
| 司法書士 | 登記の代理、法務局に出す書類の作成(司法書士法3条) | 相続した不動産の名義変更 | 調べた:条文 | 日本司法書士会連合会 |
| 行政書士 | 官公署に出す書類や、権利義務・事実証明の書類の作成(行政書士法1条の3) | 遺産分割協議書や戸籍などの書類づくり | 調べた:条文 | 日本行政書士会連合会 |
| 税理士 | 税務代理、税務書類の作成(税理士法2条) | 相続税の申告 | 調べた:条文 | 日本税理士会連合会 |
| 弁護士 | 法律事件の代理・和解など(弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬目的で扱うことを制限) | 相続人同士で話がまとまらない、揉めている | 調べた:条文 | 法テラス |
| 相続手続きの窓口サービス(nocos、相続アシストなど) | 手続き全体の相談。実際の作業を誰が担当するかは、サービスごとに確かめる | 何から始めるか分からない、複数の手続きをまとめて相談したい | 調べた:公式サイトの案内を見るところまで。使ってはいない | 各社の公式サイト |
費用は、財産の内容や相続人の数で大きく変わるため、この表には書いていません。見積もりは、必ず依頼先に出してもらってください。
先に確かめる期限は3つ

頼み先を選ぶ前に、期限があるものだけ押さえておきます。期限が遠いものは、あわてて頼まなくても大丈夫です。
| 手続き | 期限 | 出典(確認日 2026年10月19日) |
|---|---|---|
| 相続放棄・限定承認の判断 | 自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内 | 民法915条(e-Gov法令検索) |
| 相続税の申告・納税 | 死亡を知った日の翌日から10か月以内 | 国税庁 タックスアンサー No.4205 |
| 相続した不動産の登記 | 相続で所有権を取得したと知った日から3年以内。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料 | 不動産登記法76条の2・164条(e-Gov法令検索) |
相続税がかかるかどうかは財産の額などで決まります。この記事では、かかるかどうかの判断までは書きません。気になる場合は、税務署や税理士に聞いてください。
選ぶときに見るところ

- 任せたい手続きが、その資格の業務に入るか:登記は司法書士、税の申告は税理士、というように、法律で業務が分かれています
- 窓口サービスの場合、実際の作業を誰がするか:自社の担当か、提携の士業か。契約の前に聞きます
- 見積もりに含まれるものと、含まれないもの:戸籍の取得費用、登録免許税、士業への報酬などが、別になっていないか
- 期限のある手続きを、いつまでにやるかを話せるか:上の3つの期限に触れてくれるか
- 1社で決めず、比べたか:私は叔父の家の遺品整理で、1社しか見積もりを比べなかった反省があります。相続でも、可能なら複数から話を聞くと安心です
後見口座の手続きで分かったこと
私は後見人として、叔父の銀行とゆうちょの口座の手続きを行いました。相続の前の段階の手続きで、相続手続きとは別のものです。叔父が亡くなったあと、叔父の口座からお金は引き出していません。
その中で実感したのは、口座の手続きは金融機関ごとに必要な書類も窓口の対応も違う、ということです。相続でも口座の数だけ手続きが増えるはずなので、財産の洗い出しを先にして、手続きの数を数えてから頼み先を決めるほうが、見積もりを比べやすくなると考えています。
後見人がいる家族の相続は、別の記事で整理しています。被後見人が死亡したら後見人がやることもあわせて読んでください。
判断の基準:どこまで自分でやり、どこから任せるか

相続の手続きの体験がない私が言えるのは、任せる範囲と理由を決めて、記録に残すという考え方です。次の順番で整理すると、頼み先が絞れます。
- やることを書き出す(預金、不動産、保険、年金、税金など)
- 期限のあるものに印を付ける
- 自分でできるものと、資格が必要なもの、時間が足りないものに分ける
- 任せるものを決め、窓口で見積もりをもらう
どう決めたかは、あとで家族に説明できるように書いておきます。例えば次のようなメモです。
| 残すこと | 書き方の例 |
|---|---|
| 日付と相手 | ○月○日、司法書士事務所に電話。不動産の名義変更の費用を聞いた |
| 言われたこと | 必要な書類と報酬の目安を回答。見積書は後日メールで送ると言われた |
| 任せた範囲と理由 | 不動産の登記は司法書士に依頼。理由は、自分では申請書を作れないため |
| やめたこと | 比較は2か所で止めた。理由は、見積もりの項目に大きな差がなかったため |
相続手続きの代行にかかる費用:見積もりで確かめる3つのこと
相続手続きの代行の費用は、頼む範囲によって大きく変わります。決まった料金表があるわけではないので、事務所やサービスごとに見積もりを取って比べることになります。
例として、相続手続きの窓口サービス「nocos(ノコス)」(PR)が公式サイトで出している料金は、次のとおりです。![]()
| 頼む範囲 | 料金(税込) |
|---|---|
| まとめて頼む(相続スタンダードプラン。居住用の土地1筆・建物1戸が対象) | 165,000円 |
| 戸籍の収集と相続関係図 | 42,900円 |
| 遺産分割協議書 | 71,500円 |
| 預貯金の名義変更・解約 | 金融機関1か所につき55,000円 |
| 不動産の名義変更 | 71,500円 |
| 別にかかる実費 | 登録免許税(固定資産評価額の0.4%)、戸籍などの取得費、郵送費、交通費 |
どこに頼む場合でも、見積もりの段階で次の3つを確かめておくと、あとから費用が増えにくくなります。
- 料金に何が含まれるか:金融機関の数、不動産の数(土地の筆数・建物の数)で変わるか
- 実費は別か:登録免許税や戸籍の取得費は、料金とは別にかかることが多い
- どうなったら追加になるか:相続人が多い、戸籍が遠方にある、などの条件
私は叔父の後見人として、銀行とゆうちょの口座の手続きをそれぞれ行いました。相続手続きそのものはしていませんが、口座が一つ増えるだけで窓口と書類が一つ増えるのは同じです。金融機関の数で料金が変わるかは、最初に確かめておきたいところです。
手続き全体をまとめて相談したいとき
戸籍集め、預貯金の手続き、不動産の登記と、窓口が分かれていて自分では回りきれない。そう感じる方は、相続手続きの相談を受け付けているnocos(ノコス)(PR)に、自分の場合に何が必要かを聞いてみる方法があります。
料金や対応範囲は、公式サイトで確かめてください。私は使っておらず、サービスの中身は評価できません。
ほかにも、相続の手続き代行を扱う相続アシスト(PR)のようなサービスもあります。どちらも、1社で決めず、見積もりの範囲を見比べてください。
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相続手続き、まずは相談から
何から手をつけるか分からないときは、手続きの相談ができる窓口に、自分の場合の進め方を聞いてみるのも一つの方法です。
他の頼み先(普通のリンク)
よくある質問
最初に相談するなら、どこがよいですか?
一つに決まる答えはありません。不動産があるなら司法書士、相続税が気になるなら税理士、揉めているなら弁護士が出発点になります。何から始めるか分からない場合は、手続き全体の相談を受ける窓口に聞いてみてください。
自分でやるのと、頼むのとでは、どちらがよいですか?
相続人が少なく、財産が単純で、平日に動けるなら、自分で進める人もいます。財産の種類が多い、遠方に住んでいる、期限が近いといった事情があれば、任せるほうが合う場合もあります。どちらでも、判断した理由をメモに残してください。
相続放棄を考えているときは?
期限は3か月です(民法915条、2026年10月19日確認)。財産を処分する前に、家庭裁判所や弁護士・司法書士に聞いてください。遺品整理との関係は相続放棄しても遺品整理はできる?に書きました。
相続人に認知症の人がいるときは?
遺産分割の話し合いは、認知症の相続人が内容を理解できないと進められません。成年後見制度を使う場合の考え方は、認知症の親の家は売れる?でも触れています。家庭裁判所や専門家に相談してください。
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※この記事は一般的な情報で、法律・税務の助言ではありません。期限や必要な手続きは、個別の事情で変わります。判断に迷う場合は、家庭裁判所、司法書士、税理士、弁護士などの専門家にご相談ください。
この記事を書いた人:くじら99(元・成年後見人)
300km離れた認知症の叔父の成年後見人を、家庭裁判所に選ばれて、会社員のまま3年務めました。法律の専門家ではありません。家庭裁判所に出した書類や見積書など、記録が残っていることを書いています。運営者について
