被後見人が死亡したら後見人がやること|預金引き出し・財産引き継ぎ・家裁報告の手順を元・後見人が解説

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「被後見人が亡くなった。次に何をすればいい?」

後見人として動いている最中に本人が亡くなる——この瞬間、後見人の役割は大きく変わります。

成年後見制度は本人の死亡で原則終了しますが、だからといって「もう何もしなくていい」ということにはなりません。むしろ死亡後の方が、やるべき手続きが一気に押し寄せてくる場面があります。

私は働きながら300km離れた親族の後見人を3年間務め、その終盤に被後見人の死亡を経験しました。「預金は引き出せるのか」「家裁にはいつ何を報告するのか」「財産はどうやって相続人に渡すのか」——誰も丁寧に教えてくれないまま、手探りで手続きを進めた経験があります。

この記事は、その実体験をもとに「被後見人死亡後に後見人がやるべきこと」を順番通りに整理したものです。

法律の建前だけでなく、現場で起きること・迷いやすい判断を含めて解説します。

【この記事でわかること】
・被後見人死亡後に後見人の権限はどう変わるか
・家庭裁判所への報告・書類・期限の実務
・死亡後に預金を引き出せるケース・できないケース
・財産目録・通帳・現金の相続人への引き継ぎ手順
・後見人の報酬は死亡後どこまで請求できるか
・相続人がいない場合の対応と専門家相談の判断基準
・死亡後にやってはいけない行為と注意点
・死亡直後から使える手続きチェックリスト

目次

第1章:被後見人が死亡したら成年後見人の仕事はどう変わる?終了時点と基本ルール

1-1. 成年後見制度は本人の死亡で原則終了する

成年後見制度は、本人(被後見人)の判断能力を補うための制度です。

そのため本人が死亡した時点で、成年後見は法律上当然に終了します(民法第111条準用)。

後見人が家庭裁判所に申請したり、特別な手続きを取る必要なく、死亡の事実をもって終了します。

ただし「終了した」からといって後見人がすぐに手を引けるわけではありません。

終了後も後見人には一定の義務が残ります。具体的には財産の引き継ぎ・家庭裁判所への終了報告・管理計算書の提出などが必要であり、これらが完了して初めて「後見人としての役割が本当に終わる」と言えます。

1-2. 後見人の権限・義務が死亡時にどう変わるか

死亡前と死亡後では、後見人の権限と義務が大きく変わります。

項目死亡前(後見中)死亡後
財産管理権あり(家裁の監督下)原則なし(相続人に移転)
身上保護ありなし
契約締結権ありなし
預金の引き出し本人のために可原則不可(例外あり)
財産目録の作成義務継続中最終報告として必要
家裁への報告義務定期報告終了報告(最終)

特に重要なのは「財産管理権が相続人に移る」という点です。

被後見人が亡くなった瞬間から、財産は相続人のものになります。後見人がそれ以降に財産を動かすことは、原則として権限外の行為になります。

1-3. 死亡後も必要な対応とできない行為の違い

死亡後にできること・すべきこと死亡後にできないこと
家庭裁判所への死亡報告相続財産の処分・売却
財産目録・計算書の作成遺産分割協議への参加(後見人として)
相続人への財産引き継ぎ相続人全員の同意なしの預金引き出し
緊急の葬儀費用の支出(条件あり)被後見人名義での新たな契約
報酬付与の申立て管理財産の私的利用
成年後見登記の終了申請相続税申告・準確定申告の代理

⚠️ 重要:死亡後の後見人の立場は「管理していた財産を相続人に引き渡す義務を負う者」です。財産を動かす権限はなく、引き継ぎの義務だけが残ります。この区別を明確に持っておくことが、後のトラブル回避につながります。

第2章:被後見人死亡後に後見人が最初にやること|家裁・家族・相続人への連絡

2-1. 死亡の事実を確認し必要書類をそろえる

被後見人が亡くなったことを確認したら、まず以下の書類を入手・準備します。

  • 死亡診断書のコピー:医師が発行。原本は火葬許可証の取得に使うため、コピーを複数枚用意しておく
  • 住民票の除票:役所で取得。家庭裁判所への報告や金融機関の手続きで必要
  • 戸籍謄本(死亡の記載があるもの):死亡届受理後に取得可能。相続人特定にも使う
  • 後見人自身の身分証明書・印鑑:各種手続きで必要

これらと並行して、後見中に作成・管理していた書類一式(財産目録・通帳・収支記録)を手元に集めておくことが引き継ぎの準備になります。

2-2. 家庭裁判所へ報告・提出する書類と期限の目安

被後見人の死亡後、後見人は家庭裁判所に対して後見終了の報告を行う義務があります。明確な法定期限はありませんが、概ね1〜2ヶ月以内を目安に動くことが実務上の標準です。

家庭裁判所への提出書類(管轄裁判所によって異なる場合あり):

  • 後見事務終了報告書
  • 後見終了計算書(収入・支出・残高一覧)
  • 財産目録(最終版)
  • 通帳のコピー(直近分)
  • 被後見人の死亡を証明する書類(住民票除票・戸籍謄本等)
  • 報酬付与の申立書(報酬を請求する場合)

【実務メモ】
管轄の家庭裁判所に事前に電話して「被後見人が亡くなりました。何を提出すればよいですか?」と確認するのが最も確実です。書式・提出方法は裁判所によって微妙に異なります。私自身も電話確認から始めました。

2-3. 家族や相続人がいないケースでの初動対応

相続人がいない・所在不明・連絡が取れないという場合は、初動の対応が変わります。

  • 相続人調査:戸籍を遡って相続人の存否を確認する。これは後見人の義務ではなく相続の問題ですが、財産を引き渡す相手を特定するために実務上必要になる
  • 相続財産清算人の選任申立て:相続人が存在しない場合、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる手続きが必要になる(弁護士・司法書士への相談を推奨)
  • 財産の暫定保全:引き継ぎ先が確定するまでの間、管理財産を適切に保全する義務が後見人に残る

第3章:死亡後に預金は引き出しできる?銀行口座の凍結と後見人が対応できる範囲

3-1. 被後見人の死亡後は預金口座が凍結される

金融機関は被後見人の死亡を知った時点で、その口座を凍結します。凍結後は後見人であっても引き出し・振込・解約ができなくなります。

凍結のタイミングは金融機関によって異なります。

  • 後見人から死亡を申告した時点:後見人が窓口で被後見人の死亡を伝えると即時凍結される
  • 銀行が独自に死亡を確認した時点:新聞の訃報欄・住民票等で銀行側が把握した場合も凍結される
  • 相続人から申告があった時点:相続人が「被相続人が亡くなった」と伝えた場合も凍結

⚠️ 注意:後見人が死亡の事実を伝える前に急いで引き出すことは「権限外の行為」になる可能性があります。特に死亡後の引き出しは、後から相続人とのトラブルや横領を疑われるリスクがあります。記録を残した上で、慎重に動くことが重要です。

3-2. 後見人が死後に預金を引き出しできるケース・できないケース

状況引き出しの可否条件・注意点
死亡前日までの介護費用・施設費用の支払い○ 可能後見中の支出として記録が必要
死亡当日〜直後の緊急の葬儀費用△ 条件付き相続人の同意・領収書が必要。金額は必要最小限に
凍結後の引き出し✕ 不可相続手続きを経ることが必要
相続人全員の同意がある場合○ 可能遺産分割協議書または同意書が必要
後見人が相続人でもある場合△ 慎重に利益相反に注意・他の相続人の同意が必要

3-3. 葬儀費用・火葬・埋葬のための出金と銀行への説明方法

葬儀費用については、2019年の民法改正で「遺産分割前の預貯金払戻し制度」が創設されました。ただしこれは相続人が利用できる制度であり、後見人が直接使える制度ではありません。

後見人が葬儀費用を被後見人の口座から出金するには、以下のいずれかが現実的です。

  • 死亡前に後見人として支出した費用:後見中の支出として記録・計上し、後見終了計算書に含める
  • 相続人全員の同意を得た上で引き出す:相続人が葬儀費用として認めた場合、書面で同意を確認してから引き出す
  • 後見人が立替払いして相続財産から精算を求める:後見人が自費で葬儀費用を立て替え、財産引き継ぎの際に精算する方法

銀行窓口での説明では「後見人として管理していた口座の被後見人が亡くなりました。

葬儀費用として必要な金額を引き出したいのですが、手続きを教えてください」と正直に状況を伝え、銀行の指示に従うのが最も安全です。

3-4. 預貯金の引き出しで起こりやすいトラブルと注意点

  • 後から「使い込み」と疑われる:記録がない引き出しは横領と誤解されやすい。すべての出金は領収書・記録を残す
  • 相続人間で意見が割れる:葬儀費用の負担・引き出しの可否について相続人間でもめるケースがある
  • 後見人が相続人でもある場合の利益相反:相続人でもある後見人が財産を引き出すと、他の相続人から異議が出ることがある
  • 銀行が相続手続きを求めて動かない:凍結後は相続人全員の書類が揃わないと解約・払戻しができない銀行がほとんど

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第4章:後見人が管理していた財産の引き継ぎ手順|目録・通帳・現金の渡し方

4-1. 財産目録・収支・計算書を作成して引き継ぎを進める

後見人は管理していた財産を相続人に引き渡す義務があります(民法870条)。その前提として、後見終了時点での財産目録と収支計算書を作成する必要があります。

作成する書類:

  • 最終財産目録:後見終了時点での預貯金残高・現金・不動産・有価証券等の一覧
  • 後見終了計算書:後見期間中の全収入と全支出の内訳。最後の残高が財産目録と一致するように作成する
  • 領収書・通帳コピー:計算書の根拠となる証拠書類

これらは家庭裁判所に提出するだけでなく、相続人への引き継ぎの際にも使います。

「後見期間中にこれだけ管理し、これだけ使い、残りはこれです」という説明ができる状態を整えることが、後のトラブル防止になります。

4-2. 通帳・口座・現金・契約書など管理財産の整理方法

  • 通帳・キャッシュカード:相続人に引き渡す。引き渡し前にコピーを取っておく
  • 現金:金額を確認して相続人に引き渡す。受領書にサインをもらう
  • 実印・印鑑登録証明書:相続手続きで必要になるため相続人に引き渡す
  • 各種契約書:賃貸・保険・通信等の契約書を整理して引き渡す
  • 不動産関係書類:権利書・固定資産税の課税明細等を引き渡す
  • 医療・介護関係の書類:診察券・介護保険証・各種受給者証等

引き渡しの際は「引き継ぎ書」を作成して相続人のサインをもらうことを強くすすめます。

後から「受け取っていない」「金額が違う」というトラブルを防ぐための最低限の記録です。

4-3. 相続人への引き継ぎと遺産分割協議で注意すべき点

後見人の役割は財産を「相続人に引き渡すこと」であり、「誰にいくら渡すか」を決めることではありません。

遺産分割協議は相続人間で行うものであり、後見人が関与する権限はありません。

  • 相続人が複数いる場合:代表相続人を決めてもらい、その方に一括して引き渡す方法が現実的
  • 相続人間で意見が割れている場合:後見人は中立の立場を保ち、遺産分割が決まるまで財産を保全する
  • 後見人が相続人でもある場合:利益相反が生じやすいため、弁護士・司法書士への相談を検討する

4-4. 被相続人の債務や未払費用がある場合の対応

被後見人に借金・未払の施設費用・医療費がある場合、これらは相続人が引き継ぐ「負の遺産」になります。

後見人がこれらを勝手に支払ってしまうと、相続財産の減少・相続放棄の判断への影響が生じる可能性があります。

  • 未払の施設費用・医療費:後見終了計算書に「未払費用」として記載し、相続人に引き継ぐ
  • 借金・ローン:相続人が相続放棄を検討する可能性があるため、勝手に返済しない
  • 公共料金・サブスク:死亡日以降の費用は相続人の問題。後見人が支払う義務はない

第5章:家庭裁判所への終了報告は何をする?報告書・計算・登記の実務

5-1. 後見終了時に必要な報告書と計算書の作成ポイント

家庭裁判所への終了報告は、後見人が最後に行う最も重要な義務のひとつです。

書式は各家庭裁判所が用意しているものを使い、以下の内容を正確に記載します。

  • 後見期間の開始日・終了日(開始:選任審判確定日、終了:被後見人の死亡日)
  • 後見期間中の財産の動き:収入(年金・賃料等)と支出(施設費・医療費・後見人報酬等)の全記録
  • 終了時点の財産残高:現金・預貯金・その他財産の合計
  • 相続人への引き継ぎ状況:いつ・誰に・何を引き渡したか

【実務メモ】
計算書は「1円単位で合わせる」ことが求められます。私の経験では、通帳の入出金と手元現金の管理記録を照合するのに丸2日かかりました。日頃から月次で帳簿をつけていれば最後の集計が格段に楽になります。

5-2. 管理していた財産の収支報告で確認される事項

家庭裁判所(または監督人)が終了報告を確認する際に特に注目するポイントは以下の通りです。

  • 収支の整合性(収入合計−支出合計=残高)が一致しているか
  • 不自然な大額出金・使途不明の支出がないか
  • 後見人報酬が家裁の決定額と一致しているか
  • 相続人への引き継ぎが適切に行われているか

5-3. 成年後見登記の終了と家庭裁判所の監督対応

成年後見の終了後、法務局に登記されている後見情報(登記記録)を終了させる手続きが必要です。

  • 後見終了の登記:後見人(または相続人)が法務局に申請する。添付書類は死亡を証明する書類・後見人の身分証明書等
  • 申請先:東京法務局(成年後見登記は全国一括で東京法務局が管轄)または最寄りの法務局経由で申請可能
  • 費用:登録免許税1,400円(終了登記の場合)

### ブロック⑥:第6章・第7章+CTA②

第6章:後見人の報酬は死亡後どうなる?報酬付与の申立てと費用の考え方

6-1. 成年後見人の報酬はどこまで請求できるのか

成年後見人の報酬は、家庭裁判所が「報酬付与の審判」によって決定します。後見人が勝手に決めることはできません。被後見人の死亡後も、後見期間中の報酬については申立てが可能です。

報酬の請求対象期間は原則として後見開始から被後見人死亡日までです。ただし最後の報酬付与申立てのタイミングから死亡日までの期間分を、終了報告と合わせて申立てる形が一般的です。

管理財産額月額報酬の目安
1,000万円未満月2万円
1,000〜5,000万円未満月3〜4万円
5,000万円以上月5〜6万円

親族後見人の場合、報酬付与を申立てない(無報酬で行う)選択も可能です。ただし申立てる権利はあります。遠距離・就業中など負担が大きかった場合は申立てを検討してください。

6-2. 死亡後の事務・死後事務で報酬が認められる範囲

被後見人の死亡後に後見人が行う事務(終了報告・財産引き継ぎ等)については、民法873条の2で「死後事務」として一定の範囲が認められています。

後見人が死亡後に行える死後事務として認められているもの:

  • 相続財産に属する債務(医療費・施設費等)の弁済
  • 火葬・埋葬に関する契約の締結(相続人がいない・連絡が取れない場合)
  • 相続財産の保存に必要な行為

これらの死後事務については、家庭裁判所の許可を得た上で行うことが原則です。許可なしに行うとトラブルになることがあります。

6-3. 報酬付与の申立てに必要な書類と計算方法

  • 報酬付与申立書:家庭裁判所の書式を使用
  • 後見事務報告書:申立て期間中の事務内容の報告
  • 財産目録・収支計算書:管理財産と収支の記録
  • 通帳コピー:直近の入出金記録

申立ての際は「申立て期間・管理財産額・特別な事務の有無」を明記します。遠距離管理・不動産売却・特殊な対応があった場合は付加報酬が認められることがあります。

第7章:相続人がいない場合はどうする?財産清算・専門家相談の流れ

7-1. 相続人がいないときに起こる問題と手続きの流れ

相続人が存在しない・全員が相続放棄した場合、財産は最終的に国庫に帰属します。ただしそこに至るまでのプロセスを後見人が一人で対応しようとするのは現実的ではありません。

  • 相続人不存在の確認:戸籍調査によって法定相続人がいないことを確認する
  • 相続財産清算人の選任申立て:家庭裁判所に申立て、清算人(弁護士等)が選任される
  • 後見人は財産を清算人に引き渡す:相続人への引き渡しと同様の手順で清算人に引き継ぐ
  • 特別縁故者への財産分与:相続人がいない場合でも、特別に縁故のあった人(内縁の配偶者・療養看護を行った人等)が財産分与を受けられる場合がある

7-2. 遺言書の有無で変わる引き継ぎと財産処分の方法

遺言書がある場合は、その内容に従って財産が処分されます。後見人の引き継ぎ方法も変わります。

  • 公正証書遺言がある場合:公証役場で確認済みの遺言。検認不要。遺言執行者が指定されていれば、その方に引き継ぐ
  • 自筆証書遺言がある場合:家庭裁判所での検認手続きが必要(法務局保管制度を利用している場合は不要)。開封せずに家裁に持参する
  • 遺言書がない場合:法定相続の手続きに従い、相続人全員の合意のもとで遺産分割協議を行う

7-3. 弁護士・司法書士など専門家に相談が必要なケース

  • 相続人が存在しない・全員が相続放棄した
  • 相続人間で遺産分割について争いがある
  • 後見人自身が相続人でもあり利益相反が生じる
  • 不動産・事業・多額の金融資産が含まれる
  • 相続放棄の判断に関係する負債がある
  • 外国籍の相続人がいる・海外資産がある

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第8章:やってはいけない注意点まとめ|無断出金・処分・相続対応のリスク

8-1. 後見人が相続人の立場で主張しすぎると起きるトラブル

後見人が相続人でもある場合、「後見人としての立場」と「相続人としての立場」を混同してしまうと深刻なトラブルになります。

  • 後見中に自分の取り分を多くするために財産を動かすことは横領になりうる
  • 他の相続人の同意なしに「後見人だから」という理由で財産を処分することはできない
  • 後見人として管理していた財産について、自分が相続人として有利な扱いを求めることは利益相反になる

後見人としての自分と相続人としての自分は、完全に切り離して考えることが必要です。

8-2. 遺産分割・相続放棄・信託などは誰が判断するのか

手続き判断・実行する人後見人の関与
遺産分割協議相続人全員なし(相続人でもある場合は相続人として参加)
相続放棄各相続人が個別に判断なし
準確定申告相続人(4ヶ月以内)なし
相続税申告相続人なし
信託・生命保険の手続き受益者・受取人なし

8-3. 死亡後に口座から出金する前に確認すべき注意点

⚠️ 死亡後の出金前に必ず確認すること

  • その出金は後見中(死亡前)の費用か、死亡後の費用か
  • 相続人全員の同意を得ているか
  • 出金額・使途・日付を記録しているか
  • 領収書を必ず保管しているか
  • 銀行に死亡の事実を告げる前に出金しようとしていないか

ひとつでも「NO」があれば、出金を止めて専門家に相談してください。

第9章:被後見人死亡後の手続きをスムーズに進めるチェックリスト

9-1. 死亡直後から7日以内を目安に進めたい手続き

✅ 死亡直後〜7日以内のチェックリスト

  • 死亡診断書のコピーを複数枚入手したか
  • 管轄の家庭裁判所に死亡の事実を電話報告したか
  • 管理中の通帳・現金・書類を安全な場所に保管したか
  • 相続人(または家族)に連絡を取ったか
  • 被後見人名義の預貯金口座の状況を把握したか
  • 死亡後の出金は記録と同意確認なしに行っていないか

9-2. 銀行・家庭裁判所・相続人への説明で使う書類一覧

✅ 手続きで使う書類チェックリスト

  • 被後見人の死亡診断書(コピー)
  • 住民票の除票
  • 戸籍謄本(死亡記載あり)
  • 後見人の身分証明書・印鑑
  • 後見審判書謄本(後見人であることの証明)
  • 財産目録(最終版)
  • 後見終了計算書
  • 通帳のコピー(全期間分)
  • 領収書一式
  • 引き継ぎ書(相続人の署名入り)

9-3. 認知症の家族を支えた後見人が最後に確認すべき実務ポイント

後見人を務めた期間は、決して楽ではなかったはずです。家庭裁判所への定期報告・金融機関との交渉・施設との連絡・遠距離の移動——そのすべてが「本人のため」に行われてきた仕事です。

最後の仕事は「きれいに引き渡すこと」です。財産目録・計算書・引き継ぎ書を整えて、相続人と家庭裁判所に対してきちんと説明できる状態を作ること。それが後見人としての最後の責任であり、本人への最後の誠実さだと思います。

迷ったことがあれば、管轄の家庭裁判所または弁護士・司法書士に相談してください。一人で抱え込む必要はありません。

よくある質問

Q 被後見人が死亡した後、後見人はいつまでに家裁に報告しますか?

明確な法定期限はありませんが、実務上は死亡後1〜2ヶ月以内を目安に動くことが標準です。管轄の家庭裁判所に電話して提出書類と期限を確認することをすすめます。

Q 被後見人の死亡後に預金を引き出すことはできますか?

原則として、死亡後は後見人の財産管理権が消滅するため預金の引き出しはできません。例外として相続人全員の同意がある場合や、緊急の葬儀費用として最小限の出金が認められる場合があります。いずれの場合も記録と同意確認が必須です。

Q 後見人の報酬は被後見人が死亡した後も請求できますか?

はい、後見期間中(開始日〜死亡日)の報酬は請求できます。家庭裁判所に報酬付与の申立てを行い、審判によって決定されます。終了報告と合わせて申立てるのが一般的です。

Q 相続人がいない場合、財産はどうすればよいですか?

相続人が存在しない場合は、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申立てる手続きが必要です。選任された清算人(弁護士等)に財産を引き渡します。この手続きは複雑なため、弁護士・司法書士への相談をすすめます。

Q 後見人自身が相続人でもある場合、利益相反になりますか?

後見人としての財産引き継ぎと相続人としての遺産分割参加は別の立場です。財産の引き渡しは後見人として公正に行い、遺産分割は相続人として他の相続人と協議します。ただし自分に有利な形で財産を動かすことは横領になりうるため、弁護士への相談を検討してください。

この記事を書いた人

くじら99(元・成年後見人)

300km離れた認知症の親族のため、働きながら家庭裁判所に選任され成年後見人を3年間務めました。後見期間の終盤に被後見人の死亡を経験し、「誰も教えてくれない死後の手続き」を手探りで進めた実体験をもとにこの記事を書きました。財産引き継ぎ・家裁への終了報告・報酬付与の申立てまで、すべて自分で対応しました。

後見人3年間(家庭裁判所選任) 被後見人死亡後の手続きを実務で経験 財産引き継ぎ・終了報告・報酬申立てまで対応

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