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はじめに:数千万円が振り込まれた!「これで安心」は大きな勘違い
こんにちは。元・成年後見人のくじら99(@9jira99)です。
前回の記事では、誰も住まなくなった叔父(Aさん)の実家を売却するため、家庭裁判所へ「上申書」を提出し、売却の許可をもらって手続きを進めるまでの過酷な道のりをお話ししました。
そしてついに、不動産会社や買い主との契約が完了し、指定した『成年後見支援預金』の口座に、数千万円という売却代金がきっちりと振り込まれました。
「大任を果たした……! これでAさんの預金残高も潤沢になり、今後の施設費用も一生安泰だ。私の後見人としての最大の仕事は終わった!」

しかし、世の中そんなに甘くありません。数ヶ月後、一息ついた私のもとに、「想定外の恐ろしい事態」が次々と襲いかかってきたのです。
「家を売って得た大金は、そのまま全額使えるわけではない」
「売却益は『個人の所得』とみなされ、翌年の税金と介護費用が跳ね上がる」
この記事では、家を売却した「後」に成年後見人(そしてご家族)を待ち受ける、【確定申告の地獄】と【医療・介護保険料の負担割合アップ(1割負担から3割負担へ)】という、リアルなお金と税金の恐怖について、約2万文字に迫る圧倒的ボリュームで徹底解説します。
「とりあえず実家を売って現金化すれば安心でしょ?」と思っている方は、この現実(後半まで)を絶対に知っておいてください。
くじら99知らないと、家計が完全にショートします。
この記事を書いた人:くじら99(元 成年後見人)
遠方(300km以上)に住む認知症の親族のため、働きながら家庭裁判所に選任され成年後見人を務めた経験を持つ会社員。
免責事項
当サイトは個人の成年後見業務の実体験に基づく情報提供であり、法的なアドバイスを行うものではありません。個別具体的な手続きについては、弁護士・司法書士などの専門家や管轄の家庭裁判所等へご相談ください。
第1章:不動産売却「決済当日」の現場。完全なる”蚊帳の外”
税金の話に入る前に、まずは不動産が売れる最後の日、いわゆる「決済(けっさい)と引き渡し」の当日のリアルな現場についてお話しします。
決済は通常、買い主が住宅ローンを組む銀行の応接室などに、関係者全員が集まって行われます。
銀行の応接室に集う大人たち
部屋に入ると、そこには以下の人物がズラリと顔を揃えていました。
- 買い主(ご夫婦)
- 不動産会社の担当者
- 所有権移転登記を行う司法書士
- 銀行のローン担当者
- そして、売り主の代理人である私(成年後見人)
私自身、過去に自分のマイホームを買った時にこの「儀式」を経験していましたが、売る側として参加するのは初めてです。
関係者が書類を回し合い、司法書士が私の「登記事項証明書」と「実印」「本人確認書類」を厳格にチェックします。
そして、買い主の口座から融資金が実行され、そこから手数料等が引かれた残金が、Aさんの「成年後見支援預金」へと振り込まれました。
大仕事を終えたのに「蚊帳の外」という違和感
無事に数千万円の着金が確認でき、不動産の鍵を買い主に引き渡して、手続きは完了しました。
私が自分で家を買う時は、複数の不動産会社を比較し、担当者の対応を見て、納得いくまで条件を交渉しました。
しかし今回は、Aさんが認知症になる前に「すでに依頼していた地元の不動産会社」がすべてを取り仕切っています。関係する司法書士も銀行も、すべてその地元の不動産会社の繋がりのある企業・士業の方々でした。
「売るのはこちら側(私)なのに、なんだか向こうのペースで全部終わってしまったな……」
という、少しの違和感。実はこの違和感が、後に「アフターフォローが一切ない」という税金トラブルへの伏線となるのです。
とはいえ、その時は「まあ、家が無事に売れて大任を果たせたからよしとしよう」と、安堵の気持ちの方が勝っていました。
第2章:売れる家ならまだマシ。「訳あり物件」の恐怖と対策


さて、今回Aさんの実家は無事に買い主が見つかり、数千万円というお金に変わりました。しかし、これは「たまたま運が良かっただけ」と言っても過言ではありません。
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第3章:恐怖の幕開け。売却益は「個人の所得」になるという事実



さて、本題に戻りましょう。
売買契約が終わり、入金されたお金の通帳コピーを家庭裁判所へ提出し、「無事に不動産売却の手続きが完了しました!」と報告を終えた私。
しかし、年が明けた頃、私はとんでもない事実を知ることになります。
それは、「家を売って手にした大金(売却益)は、Aさんの『個人の所得(儲け)』とみなされる」ということです。
「……えっ? 所得? ということは、税金がかかるの!?」
「譲渡所得」という名の巨大な税金
不動産を売却した際に出た利益のことは、税務上「譲渡所得(じょうとしょとく)」と呼ばれます。 この譲渡所得に対しては、「所得税」と「住民税」がガッツリと課税されます。
【譲渡所得の基本的な計算式】
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)
- 取得費: その家を過去に買った時の代金や建築代金など。
- 譲渡費用: 今回家を売るために払った仲介手数料や印紙代など。
もし、昔買った家が買った時よりも高く売れた場合、その「儲け」に対して税金がかかります。
さらに恐ろしいのは、「昔すぎて、いくらで家を買ったか(取得費)が分からない場合」です。先祖代々の土地などで買った値段が不明な場合、売却価格のたった「5%」しか取得費として認められず、残りの95%が丸々「利益」として計算され、莫大な税金が課せられてしまうのです。
人の「確定申告」を自力でやる絶望
Aさんのような年金生活者であっても、この譲渡所得が発生した翌年の春には、「確定申告」をして税金を納めなければなりません。
私自身、会社員として年末調整をしており、個人的にふるさと納税程度の簡単な確定申告は経験がありました。
しかし、「認知症の被後見人の代わりに、不動産売却の複雑な確定申告を代理で行う」というのは全く次元が違います。
「売買契約書」「仲介手数料の領収書」「固定資産税の精算書」など、膨大な書類を抱え、やり方もさっぱり分からないまま、私はAさんの住所を管轄する税務署へ電話し、何度も相談しながら自力で申告書を作成しました。
※今思えば、数万円払ってでも最初から税理士に丸投げすべきでした。不動産会社からは、「売った後の税金の手続き」に関するアフターフォローやアドバイスは一切ありませんでした。
第4章:さらなる悲劇。医療・介護の「負担割合」が爆上がりする
多額の所得税・住民税を納付し、「これで本当に終わりだ……」と白目を剥いていた私に、行政はさらなる追撃を仕掛けてきました。
夏頃、市役所からAさん宛てに新しい「後期高齢者医療被保険者証(保険証)」と「介護保険負担割合証」が届きました。
その中身を見た瞬間、私は自分の目を疑いました。



……3割!?
これまで、年金暮らしのAさんは所得が低かったため、病院での医療費も、特別養護老人ホームでの介護サービス費も、すべて「1割負担」で済んでいました。
しかし、不動産を売却したことで「一時的に数千万円の譲渡所得(儲け)があった」と行政に判定されてしまったのです。
その結果、Aさんは「現役並み所得者(富裕層)」と同じ扱いになり、医療費も介護費も、翌年からの負担割合が一気に「1割から3割(つまり3倍!)」へと跳ね上がってしまったのです。
施設費用が赤字に転落!「成年後見支援預金」の罠
前回の記事で、私はAさんの「毎月の年金」と「毎月の施設費用(支出)」を計算し、「これならなんとか年金だけで施設の支払いをやっていける」と安堵していました。
しかし、介護保険の自己負担が3倍になったことで、毎月の施設費用が数万円単位で大幅に増額されてしまったのです。



完全に計画が狂いました。
年金だけでは毎月の支払いが赤字になり、口座のお金がみるみる減っていきます。
ここで、あの不動産を売った大金が役に立つ!……はずなのですが、思い出してください。
あの大金はすべて、家庭裁判所の許可がないと1円も引き出せない「成年後見支援預金」の中にロックされているのです。
私は慌てて家庭裁判所に連絡し、「不動産売却の影響で介護保険料が上がり、日常の生活費口座がショートしそうです! 支援預金から〇〇万円を取り崩して、生活口座に移す許可(指示書)をください!」と、新たな上申書と事情説明書を書くハメになりました。
まさに、想定外の事態の連続。金額が入金されて「お疲れ様でした」で終わるほど、不動産売却の現実は甘くなかったのです。
第5章:さらに追い討ち!「税金の優遇措置」が使えない厳しい罠


「家を売っても、3,000万円までは税金がかからない特例があるって聞いたことがあるけど?」
不動産や税金に少し詳しい方なら、そう疑問に思うかもしれません。
確かに、自分が住んでいたマイホームを売った場合、譲渡所得から最高3,000万円までを差し引くことができる「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」という非常に強力な優遇措置が存在します。
これを使えば、大半の家は税金がゼロになります。
しかし、成年後見人が被後見人(Aさん)の家を売る場合、この特例が「使えない(適用外になる)」ケースが非常に多いのです。
「施設に入ってから3年」という非情なタイムリミット
この3,000万円控除の特例を受けるためには、厳しい条件があります。
本人が施設に入所して家が空き家になった場合、「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること」というタイムリミットが設定されているのです。
認知症の進行で施設に入所し、家族が慌てて成年後見人の申立てを行い、裁判所の許可を取って、買い主を見つけて売却する……。この一連の作業を、施設に入所してから3年以内にすべて完了させるのは至難の業です。
買い換え特例も使えない
また、一般の人が家を売る場合、「売ったお金で新しい家(新居)を買う」ことで税金が繰り延べられる特例もあります。
しかし、施設に入っているAさんのために、成年後見人が新しく家やマンションを買うことなどあり得ません(裁判所が絶対に許可しません)。
このように、不動産売却においては「普通なら使えるはずの税金の優遇措置が、成年後見のケースではことごとく使えない」という厳しい現実が待っているのです。
第6章:地獄を見ないために!不動産を売る前の「3つの絶対対策」
私が身をもって経験したこれらの複雑な手続きと、その後の「税金・保険料の爆上がり」という影響を避ける(あるいは事前に備える)ためには、以下の対応が絶対に必要です。
対策1:専門家(税理士)の助言を必ず得る
「確定申告くらい自分でできるだろう」という私の素人考えが、最大の失敗でした。
不動産売却の税金計算や特例の適用可否は、プロでも判断が分かれるほど複雑です。



必ず、売却前に「税理士」に相談してください。
税理士への相談費用や確定申告の代行費用は、Aさん(ご本人)の財産から正当な経費として支払うことができます。後見人が自分の時間と精神をすり減らして自力でやる必要は全くありません。
対策2:売却「前」に詳細な資金計画(シミュレーション)を立てる
家を売る前に、役所や税理士と連携して以下のシミュレーションを行ってください。
- 売却益によって、来年の「所得税・住民税」はいくらになるか?
- 来年の「後期高齢者医療保険」と「介護保険」の自己負担割合は、1割から何割に上がるか?
- 保険料が上がった場合、毎月の施設費用はいくら増えるか?
- 増えた費用を支払うために、成年後見支援預金からいくら生活口座へ移しておくべきか?
当時、私にはこの「売却後の影響を予測する」という考慮が完全に欠けていました。事前に予測できていれば、裁判所へも一度の上申でスムーズにお金の移動許可が取れていたはずです。
対策3:成年後見・相続に強い「不動産会社」をパートナーに選ぶ
今回、Aさんが以前から依頼していたという理由で地元の不動産会社に任せましたが、彼らは「家を売ること」のプロであっても、「成年後見制度」や「売却後の税金・介護保険の影響」については素人同然でした。
そのため、売却後のアフターサポートや、「税金が高くなるので税理士を紹介しましょうか?」といった提案は一切ありませんでした。
不動産売却は、「売って終わり」ではありません。 法律や税金、介護の知識までを総合的にサポートしてくれる、信頼できる大手の不動産会社や、専門性の高いパートナーを選ぶことが何よりも重要です。
普通の不動産屋に断られた「空き家・訳あり物件」も現金化できる
長期間放置された空き家、再建築不可物件、事故物件、親族間の共有持分など……手放すのが難しい不動産は、専門の買取サービス「ワケガイ(ネクスウィル)」に任せるのが一番確実です。
自社で買取からリノベーションまで一貫して行うため、他社で断られた物件でもスピーディーに現金化してくれます。面倒な交渉もすべて丸投げできるため、まずはWEBから「無料査定」で現状を相談してみましょう。
※物件の所在地や状態を入力するだけで簡単に査定依頼が可能です。
まとめ:家を売るなら「すべてを把握してから」動け


成年後見人としての不動産売買の手続きは、単に「買い主を見つけてハンコを押す」だけではありません。
- 家庭裁判所への上申と許可
- 複雑な書類の収集と司法書士との連携
- 支援預金への入金手配
- そして、売却による「所得の増加」がもたらす、税金と保険料の劇的な高騰への対応
これらすべてを、フルタイムで働きながら、しかも遠距離でこなさなければならないのです。
ここまで読んでくださった方には、「未経験者が成年後見人を務めることの壮絶な大変さ」が、痛いほど理解していただけたかと思います。
決められた不動産会社、限られた時間での契約。そして手探りで乗り越えた確定申告と、介護保険の負担割合増に対するお金の移動。
「本当は、自分が比較検討して選んだ、信頼できるパートナー(専門家)と一緒に仕事をしたかった」というのが、私の偽らざる本音です。
成年後見人の業務で、不動産売却が起こるケースは一生に一度あるかないかかもしれません。しかし、「知っていることは、最大の防衛策(味方)」になります。
これから成年後見人になる方、あるいは親の実家の売却を控えている方は、私の失敗を反面教師にして、必ず「売った後のこと」まで見据えた準備をしてください。
次回以降も、綺麗事では済まされない「成年後見人のお仕事の現実」を、包み隠さずお伝えしていきます。



まだまだ続く長い道のり。ではまた!
※当サイトは実体験に基づく情報提供であり、法的なアドバイスを行うものではありません。個別具体的な不動産売却、税金計算、保険料への影響については、必ず税理士や管轄の市区町村窓口にご相談ください。










