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はじめに:成年後見人の最大のパートナーは「施設の相談員」
こんにちは。元・成年後見人のくじら99(@9jira99)です。
親族が認知症などで倒れ、成年後見人の申立てを検討し始めたとき。あなたが最も多く連絡を取り合い、ある意味で「運命を共にする」ことになる相手は誰だと思いますか?
くじら99弁護士でも、家庭裁判所の調査官でもありません。
それは、ご本人が入所する「介護施設の相談員(ソーシャルワーカー)」です。
私の叔父(Aさん)は、措置入院のあと、ショートステイ ➡ 有料老人ホーム ➡ 特別養護老人ホーム(特養)へと、目まぐるしく居場所を移していきました。
このプロセスの中で、遠方に住む後見人(私)が直面したのは、「銀行口座が凍結されていて1円も払えないのに、毎月の施設費用だけは確実にかかり続ける」という恐ろしい現実でした。
この記事では、私が成年後見人としてどのように介護施設と連携し、認知症の叔父の居場所を確保し、そして「支払いの猶予」を勝ち取ったのか、リアルな経験を基に解説します。
親の介護や認知症リスクに直面している方にとって、必ず役立つ「現場の知恵」をお伝えします。
第1章:終わりのない施設探し。
ショートステイから特養への長く険しい道のり
叔父が倒れて措置入院をした後、当然ですが「元のゴミ屋敷(自宅)」には戻せません。
ここから、後見人としての終わりのない施設探しが始まりました。
1. まずは「ショートステイ」へ緊急避難
退院後、叔父はとりあえず空きのあった「ショートステイ(短期入所生活介護)」に入所しました。
しかし、ショートステイはあくまで家族のレスパイト(一時的な休息)などを目的とした一時的な施設です。
何ヶ月も長期間居座ることはできず、早急に次のステップ(長期入所先)を探す必要がありました。
2. 「特養」はすぐには入れない!残酷な待期待ちの現実
最終的な目標は、費用が比較的安く、終身で看取ってくれる「特別養護老人ホーム(特養)」に入ることです。
【引用:特別養護老人ホームの待機者数】
厚生労働省の調査(令和4年)によると、全国の特別養護老人ホームの入所申込者数(待機者数)は、約25万3千人に上ります。要介護3以上の重度者が優先されるため、地域によっては数ヶ月〜数年単位の待機が発生します。
出典:[厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者等の状況」]
叔父の場合も、特養に申し込みはしたものの、「いつ空きが出るかは全く約束できない」と告げられました。
3. 特養までの「繋ぎ」としての有料老人ホーム
ショートステイの期限が迫る中、特養の空きを待つための「繋ぎ」として、民間の有料老人ホームを急遽契約することになりました。



当然、特養よりも毎月の費用は高額になります。
本人の年金だけで賄えるのか、不足分をどう工面するのか、遠方からの施設見学と契約手続きなど、私の有給休暇は飛ぶように消えていきました。
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「親が急に倒れた」「認知症が進んで家ではみられない」
そんな切羽詰まった状況で、素人がネットの情報だけで施設を探すのは至難の業です。
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第2章:口座凍結の恐怖。「毎月の支払い」をどう乗り切ったか?


施設探しの苦労に加え、私を最も精神的に追い詰めたのが「お金の問題」でした。
叔父の預金通帳は見つかり、残高があることは確認できていました。
しかし、叔父はすでに認知症と診断されているため、銀行口座は完全に凍結されています。
私が家庭裁判所へ申立てを行い、「成年後見人」として正式に選任され、法務局での登記が完了するまでの「約半年間」。この間、叔父の口座からは1円も引き出すことができません。
にもかかわらず、ショートステイや有料老人ホームの毎月の利用料(十数万円)は容赦なく発生し続けます。
施設の相談員への「支払い猶予」の土下座交渉
私は、施設の担当相談員に頭を下げ、恥を忍んで現状を説明しました。
「預金残高があることは確認できているのですが、現在、成年後見人の申立て手続き中で口座が凍結されています。選任されるまでの数ヶ月間、どうか利用料の支払いを猶予していただけないでしょうか」



民間施設にとって、利用料の未払いは死活問題です。
もし「それは困ります。退所してください」と言われれば、叔父は行き場を失い、私が毎月十数万円を自腹で立て替えるしかなくなります。
この交渉は、本当に胃に穴が空くようなプレッシャーでした。
信頼を勝ち取った「こまめな報・連・相」
幸いなことに、Aさんの担当相談員は非常に親身で、事情を理解してくれました。
しかし、ただ「待ってください」と放置するわけにはいきません。私は、施設側を不安にさせないため、徹底的に以下のことを実行しました。
- 進捗のリアルタイム報告: 「本日、家庭裁判所で面談が終わりました」「〇月〇日に審判書が届く予定です」と、手続きの進行状況をこまめに電話で共有しました。
- 現地訪問時の顔出し: 300km離れていても、施設を訪問した際は必ず相談員に直接挨拶し、誠意を見せました。
- 認知症ケアへの協力: アルツハイマー型認知症による行動変化について、施設側からの報告を傾聴し、面会時の安全確保や対応方針(無理に説得せず柔軟に対応するなど)に家族として全面協力しました。
結果として、「この後見人(候補)なら信頼できる」と判断してもらい、正式に後見人として登記が完了するまでの間、支払いを待ってもらうことができたのです。
施設側としても、「後見人が現在どういう立場で、どこまで手続きが進んでいるのか」が見えれば、安心して支援を続けることができるのです。
第3章:後見人に「なってから」が本当のスタート。
具体的な業務とは
施設との支払い猶予の交渉を乗り越え、約半年後にようやく「成年後見人」としての登記が完了しました。
「これでやっと口座の凍結が解除できる!」と安堵したのも束の間、ここからが成年後見人としての果てしない実務のスタートでした。
- 凍結口座の解除と支払い代行:法務局の証明書を握りしめ、銀行の窓口で口座名義を「成年後見人」に変更。そこから、猶予してもらっていた数ヶ月分の施設費用や未払い請求を一気に振り込みました。
- 有料老人ホームから「特養」への移行手続き:数ヶ月後、ついに特養の空きが出たという連絡が。有料老人ホームの退去手続き、日割りの精算、そして特養との新たな入所契約(分厚い契約書への署名・捺印)をすべて私が代行しました。
- 叔父の体調変化と生活費のモニタリング:認知症が進行するにつれ、必要なおむつ代や医療費が変わります。施設の相談員と毎月連絡を取り合い、叔父の口座から支払う生活費の額を調整し続けました。
- すべての領収書の保管(裁判所への報告用):施設に支払った利用料、購入した日用品など、1円単位ですべての領収書を保管し、エクセルに入力して家庭裁判所へ提出する準備を常に行う必要がありました。
これらを、会社員としての通常の仕事と並行して、数年間にわたり毎月行い続けるのです。
契約や金銭の手続きは、「後見人」という法的な立場がなければ一切進められません。
だからこそ、倒れる前から(あるいは倒れた直後から)準備だけは先に整えておく必要があるのです。
第4章:もし、あなたの親がまだ「認知症になっていない」なら
ここまで読んでいただき、成年後見人として施設とやり取りする苦労、そして「口座凍結」の恐ろしさが少しはお分かりいただけたかと思います。
私から強く、強くお伝えしたいことがあります。それは、絶対に私と同じ苦労(成年後見制度の利用)をしないでほしいということです。
「家族信託」という最高の事前対策
親が認知症になる前に、信頼できる家族(子どもなど)に財産の管理・運用・処分を託しておく仕組みが「家族信託」です。
もし叔父が元気なうちに家族信託を利用していれば、以下のような地獄を回避できました。
- 認知症になっても口座が凍結されないため、私が立て替えたり、施設に支払いを待ってくれと土下座交渉したりする必要がなかった。
- 家庭裁判所の厳しい監督や、1円単位の報告義務から解放され、家族の柔軟な判断で財産を使えた。
- 誰も住まない実家を、私の権限でスムーズに売却し、特養の費用に充てることができた。
「まだ元気だから大丈夫」という油断が、数年後のご家族を、私と同じ地獄に突き落とします。
手遅れになって資産が凍結される前に、家族信託の専門家に一度無料相談してみることを強くおすすめします。
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まとめ:施設との連携は「信頼」で成り立つ。そしてその先へ


介護施設の担当者との連携は、成年後見人業務の中でも最も重要であり、ご本人の命と生活を支える「要」となる部分です。
こまめな連絡、状況の正直な共有、そして柔軟な対応によって信頼関係を構築できたからこそ、私は叔父に安心・安全な生活環境を提供し続けることができました。
しかし、成年後見人としての長く苦しい業務は、「ご本人が亡くなった日」に突然、終わりを迎えます。
施設での看取りを終え、葬儀の手配をし、「これでようやく、私の役目も終わった……」と深く息を吐いたとき。



私には、その後の真実をお伝えする義務があります。
成年後見人の業務が終わった直後、ご家族の目の前には、「終わらない戸籍収集」「親族間での遺産分割」「期限の迫る相続税申告」といった、『相続』という名のさらに過酷な手続きの山が立ちはだかります。
成年後見人として、施設のやり取りや裁判所への報告ですでに心身を削られたあなたが、さらに相続手続きまで自力で抱え込む必要はありません。



自分でやる苦労は、成年後見人だけで十分です。
これ以上無理をしたくない方は、ぜひ以下の「プロに丸投げできる解決策」の解説記事もあわせて読んでおいてください。


次回は、家庭裁判所から審判書が届き、法務局で登記をして正式に活動を始める際の手続きについて、さらに詳しくお届けします。



それでは、また!
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※当サイトは実体験に基づく情報提供であり、法的なアドバイスを行うものではありません。個別具体的な手続きは、必ず弁護士や専門機関にご相談ください。








