こんにちは。元・成年後見人のくじら99(@9jira99)です。
「家族葬にすれば安く済むと思っていたのに、見積もりが100万円近かった」
そんな声を聞くことがあります。国民生活センターにも、実際にそうした相談が寄せられています。
私は成年後見人として被後見人Aさんの財産を3年間管理し、亡くなった後は葬儀の手配を親族の方と一緒に進めました。判断そのものは相続人である親族にお任せしましたが、施設からの連絡を受けて葬儀社とやり取りをする実務は担いました。
そのときに感じたのは、葬儀は「比較できない状況で契約させられる取引」だということです。
後見人として、私は1円単位の支出を家庭裁判所に説明する立場でした。日頃から領収書と通帳を突き合わせる作業をしていた人間ですら、葬儀の見積書を前にすると「これが高いのか安いのか分からない」という状態になります。
この記事では、家族葬の費用が想定より膨らむ構造、実際に起きたトラブル、そして契約前に確認すべき7項目を整理します。
この記事でわかること
- 「家族葬=安い」が崩れる3つの理由
- 費用が膨らむ構造(動揺・時間切迫・比較経験のなさ)
- 国民生活センターに寄せられた実際のトラブル事例
- 契約前に確認すべき7項目
- 後見人として見た「一式」表記の危うさ
- 費用が用意できないときの選択肢
—
この記事を書いた人:くじら99(元 成年後見人)
遠方(300km以上)に住む認知症の親族のため、働きながら家庭裁判所に選任され成年後見人を務めた経験を持つ会社員。
免責事項
当サイトは個人の成年後見業務の実体験に基づく情報提供であり、法的なアドバイスを行うものではありません。個別具体的な手続きについては、弁護士・司法書士などの専門家や管轄の家庭裁判所等へご相談ください。
1. 「家族葬=安い」が崩れる3つの理由
1-1. 平均105.7万円という数字の重み
家族葬の費用相場は、鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査」(2024年)で105.7万円とされています。
「家族葬」という言葉の響きから、20〜30万円程度をイメージしていた方には、この数字は意外かもしれません。参列者を絞っても、祭壇・棺・搬送・安置・式場・火葬といった基本の構成は変わらないためです。
費用の内訳や誰が負担するのかについては、家族葬の費用は誰が払う?後見人・相続人が直面する費用負担の実務に詳しくまとめています。この記事では「なぜ想定より高くなるのか」に絞って解説します。

1-2. 香典が減る分、実質負担は下がらない
見落とされやすいのが香典です。
参列者が減れば飲食費と返礼品費は下がりますが、同時に香典収入も減ります。一般葬と家族葬では、香典収入に50万円前後の差が出ることがあります。
実質負担額 = 葬儀総費用 − 香典収入
規模を半分にしても、実質負担が半分になるわけではありません。「家族葬にしたのに、思ったより手元から出ていった」という感覚は、この構造から生まれます。
1-3. 互助会に入っていても足りないことがある
「毎月積み立ててきたから大丈夫」と考えている方は多いと思います。
しかし互助会の掛金は、葬儀費用の全額を賄うものとは限りません。特定の物品や役務の提供に充当される形が一般的で、それを超える部分は追加負担になります。
実際に、掛金を完納済みだったにもかかわらず、互助会の補償額を差し引いてなお100万円近い支払いが発生した事例が、国民生活センターに報告されています(詳しくは第3章)。
—
2. 費用が膨らむ3つの構造

ここがこの記事の核心です。業者が悪意を持っているという話ではありません。取引の性質そのものに、費用が膨らみやすい構造があるという話です。
2-1. 動揺・時間切迫・比較経験のなさ
葬儀の契約には、他の高額取引にない特徴があります。
| 通常の高額取引 | 葬儀 |
|---|---|
| 冷静に検討できる | 家族を亡くした直後で動揺している |
| 時間をかけられる | 数時間以内に決めなければならない |
| 過去の経験がある | 人生で数回しか経験しない |
| 相見積もりを取れる | 比較する余裕がない |
住宅や車なら、何日もかけて比較検討します。しかし葬儀は、この4つの不利な条件が同時に成立する唯一といっていい取引です。
自宅で契約した場合でも、8日以内に無条件で解除することはできません。署名前の確認が、他の取引以上に重要になります。
2-2. 「普通はされますよ」が断りにくい理由
打ち合わせの場では、次々と選択を求められます。祭壇の写真、棺のグレード、お花の量、湯灌(ゆかん)の有無。
そこで「普通はされますよ」と言われたとき、断るのは想像以上に難しいものです。
理由は単純で、断ることが「故人を粗末に扱うこと」に感じられるからです。金額の問題ではなく、罪悪感の問題になります。
これは業者の話術という以前に、遺族の側が置かれた心理状態の問題です。だからこそ、その場で判断しようとせず、事前に基準を持っておくことが唯一の防御になります。
2-3. 安い選択肢が提示されないのはなぜか
もう一つの構造的な問題があります。
葬儀社が最初に提示するプランは、必ずしも最安のものではありません。会場によって使える祭壇の最低価格が決まっていたり、その会場に家族葬向けの小規模な式場がなかったり、条件に合う別の会館が遠方だったりします。
つまり、「あなたの希望に合う別の選択肢がある」という情報が、こちらから聞かない限り出てこないことがあります。
こちらが「もっと安いプランはありますか」「別の会場は使えますか」と質問して初めて、選択肢が開示される。この非対称性を知っているかどうかが、総額を大きく分けます。
—
3. 実際に起きたトラブル事例
国民生活センターが公表した「令和8年度第1回 国民生活センターADRの実施状況と結果概要」に、家族葬の費用をめぐる紛争事例が掲載されています。
概要を整理します。
申立てに至った経緯
父親を亡くした遺族が、掛金を完納済みの互助会を利用すれば大きな追加負担はないと考えていました。しかし打ち合わせで次々と選択を求められ、必要性を感じていなかった湯灌も勧められて受け入れます。会館への移動があり時間がないと急かされ、親族と相談する間もないまま契約。互助会の補償額を差し引いてもなお、支払いは100万円近くになりました。
葬儀後に問い合わせたところ、予算を事前に伝えてもらえれば別の会場で対応できた、という説明を受けたといいます。打ち合わせの場では一度も出てこなかった話でした。
双方の主張
遺族側は、互助会の充当についての説明がないまま選択を迫られたと主張。業者側は、プラン価格も互助会の控除額も説明済みであり、手続きは適正だったと反論しました。
仲介委員の判断
希望に沿う会館という選択肢を示さなかった点について、契約時に重要な事項を告げておらず説明義務に反する点が見受けられる、として、業者に約40万円の返金を検討するよう和解案が提示されました。
結果
業者はこれを拒否。和解成立の見込みなしと判断され、手続きは終了しました。
出典:国民生活センター「令和8年度第1回 国民生活センターADRの実施状況と結果概要」
—
この事例から読み取れることは3つあります。
① ADRには強制力がない
仲介委員が返金を提案しても、業者が拒否すれば手続きは終わります。次の手段は訴訟ですが、説明を受けていれば別会館を選んだこと、その場合いくら安くなったかを立証する必要があり、実務上のハードルは高くなります。弁護士費用を考えると、金銭回収だけを目的とする訴訟は割に合いにくいのが現実です。
② 事後の交渉は極めて不利
役務が提供済みである以上、契約全体を取り消して全額返金を受けることは困難です。現実的には、不要なオプション代や差額を求める形になります。
③ だから、事前が全て
—
4. 契約前に確認する7項目

具体的な自衛策です。打ち合わせの場で実践できる形にまとめました。
確認事項1:搬送だけを先に依頼する
病院や施設から遺体を移動させる必要がありますが、搬送を依頼した業者に葬儀まで任せる義務はありません。
「まず搬送だけお願いします。葬儀を依頼するかは見積もりを見てから決めます」と最初に伝えてください。この一言があるかないかで、その後の交渉の立場が変わります。
確認事項2:2人以上で打ち合わせに参加する
1人で対応すると、説明内容も金額も記憶が曖昧になります。動揺している状態ではなおさらです。
もう1人いれば、その場で相談できますし、後から「そんな説明は聞いていない」という水掛け論を避ける証拠にもなります。説明された内容と金額を、その場でメモに残してください。
確認事項3:支払総額の上限を、税込の数字で伝える
「予算は◯◯万円まで、税込で」と最初に明言します。
これを言わないと、業者側は標準的なプランから提案を始めます。前述の事例でも、予算を伝えていれば別会場を提案できたという話が後から出ています。言わなければ、選択肢は出てきません。
確認事項4:4つの質問を必ずする
こちらから聞かない限り出てこない情報があります。
- 一番安いプランはどれですか
- 別の会場を使う選択肢はありますか
- 互助会(または会員制度)はどこまでカバーしますか
- 追加料金が発生する条件は何ですか
失礼な質問ではありません。当然確認すべきことです。
確認事項5:単価と数量が記載された見積書を受け取る
「一式」表記だけの見積書は受け取らないでください。
祭壇一式、葬儀一式——この表記では、何が含まれていて何が含まれていないかが分かりません。棺は別途、ドライアイスは別途、といった追加が後から発生します。
単価×数量の形で明細を出してもらい、変更するたびに総額を確認する。 これが最も確実です。
確認事項6:「普通は」に流されない
第2章で書いた通り、この一言は断りにくいものです。
対策として、「必要かどうか判断できないので、今回は付けません」という定型の断り文句を、事前に用意しておいてください。その場で言葉を探すと、流されます。
故人を大切に思う気持ちと、オプションを付けるかどうかは別の話です。
確認事項7:見積もり外の支出を確認する
葬儀社の見積書に含まれないものがあります。
- お布施・戒名料(20〜50万円程度)
- 心付け
- 火葬場の待合室使用料
- 会葬礼状の追加分
「この見積書に含まれていない支出は何がありますか」と直接聞いてください。総額の把握には不可欠です。
—
5. 後見人として見た「一式」表記の危うさ
くじら99ここからは、少し違う角度の話です。
成年後見人は、被後見人の財産から支出したすべてのお金について、家庭裁判所に説明する義務を負います。私は3年間、領収書に番号を振り、通帳の出金と1円単位で突き合わせる作業を続けました。
その立場から葬儀の見積書を見ると、「一式」という表記がいかに異質かが分かります。
家裁に提出する報告書で「葬儀一式 80万円」と書いたら、まず間違いなく内訳の説明を求められます。何にいくら使ったのかが分からない支出は、後見の世界では認められません。
ところが葬儀の現場では、この表記が当たり前のように通用しています。
もちろん、葬儀社の見積もりが不当だと言いたいわけではありません。パッケージとして提供する合理性もあります。ただ、支払う側が内訳を知らないまま契約するのが常態化しているという事実は、認識しておいたほうがいいと思います。
もう一点、後見人の立場だからこそ言えることがあります。
被後見人が亡くなった時点で、後見人の権限は終了します。 本人の口座から葬儀費用を引き出すことはできません(民法111条1項1号)。火葬・埋葬の契約締結は民法873条の2第3号で例外的に認められていますが、家庭裁判所の許可が必要です。
私が親族の方に判断をお任せしたのは、この権限の問題があったためです。実務のお手伝いはしましたが、費用の支出を決めるのは相続人であるという線は守りました。
後見終了後にできること・できないことは、被後見人が死亡したら後見人がやることに整理してあります。
—


6. 最大の防御は、事前に相場を持っておくこと
ここまで7つの確認事項を挙げましたが、これらを打ち合わせの場で実践するのは、正直に言って難しいと思います。
動揺している。時間がない。相手はプロ。そんな状況で「一番安いプランは」「別の会場は」と冷静に質問し続けられる人は、多くありません。



では、どうすればいいのか。
事前に資料を1〜2社分取り寄せておく。それだけで、「この規模ならこのくらい」という数字が自分の中に1つ残ります。
その数字があるかないかで、打ち合わせの場での判断がまったく変わります。提示された見積もりが相場の範囲内なのか、大きく外れているのか。それが分かるだけで、不必要に不安になることも、逆に流されることもなくなります。
そして、資料請求も相談も無料です。各社は成約時に費用を得る仕組みなので、情報収集の段階で利用者が負担することはありません。しつこい営業が不安であれば、「今は情報収集の段階です」と最初に伝えれば十分です。
🕊️ 急いでいないときにこそ、資料だけ取り寄せておく
「家族葬のこれから」は、全国一律価格で必要なものを揃えたプランを提供しています。直葬86,900円(税込)から、通夜・告別式を行う家族葬プランは471,900円(税込)から。親会社が葬儀社ではないため、提携先を公平に選定している点も特徴です。
資料請求は無料で、本人でなくても取り寄せられます。事前に資料請求をしておくと葬儀代金が5万円引きになるキャンペーンも実施中です。急いでいないときこそ、取り寄せておく意味があります。
※上記は資料請求割引適用価格です。プラン内容・対応エリアは資料でご確認ください。
![]()
![]()
なお、複数社の資料を比べることに抵抗を感じる必要はありません。それは葬儀社にとっても普通のことです。むしろ比較した上で選ばれたほうが、後々のトラブルも起きにくくなります。
—


7. 費用が用意できないとき
現実的な選択肢を整理します。
直葬・火葬式という形
ただし、親族や知人が弔意を示す機会がなくなること、後から「なぜ葬儀をしなかったのか」と言われる可能性があること、菩提寺がある場合は事前相談が必要なことに注意してください。
公的な給付金
葬儀費用の一部を補助する制度があります。
| 制度 | 支給額の目安 | 申請先 |
|---|---|---|
| 健康保険の埋葬料 | 5万円 | 協会けんぽ・健保組合 |
| 国民健康保険の葬祭費 | 1〜7万円(自治体による) | 市区町村 |
| 後期高齢者医療の葬祭費 | 3〜7万円(自治体による) | 市区町村 |
申請期限は多くが2年です。
忘れやすいので、落ち着いた段階で必ず手続きしてください。
生活保護受給者の場合は「葬祭扶助」により公費で賄われる制度があります(申請が必要)。
口座が凍結されている場合
故人の口座は死亡を金融機関が知った時点で凍結されますが、相続預貯金の仮払い制度により一定額まで引き出せます。
ただし、相続放棄を検討している場合は注意が必要です。故人の預貯金を使うと単純承認とみなされ、放棄ができなくなる可能性があります。
仮払い制度の詳細と上限額の計算は、家族葬の費用は誰が払う?にまとめています。
—


よくある質問
Q. 家族葬は本当に安いのですか?
A. 一般葬より総額は下がる傾向にありますが、香典収入も減るため実質負担は想定ほど下がらないことがあります。平均は105.7万円です。「家族葬」という名称だけで安いと判断せず、内訳を確認してください。
Q. 互助会に入っていれば追加費用はかかりませんか?
A. かかることがあります。互助会の掛金は特定の物品・役務に充当される形が一般的で、全額を賄うとは限りません。何がどこまでカバーされるのかを、加入時点で確認しておいてください。
Q. 契約後に高額だと気づいた場合、解約できますか?
A. 葬儀サービスはクーリングオフの適用除外です。また役務提供後の全額返金は実務上困難です。契約前の確認が唯一の防御になります。
Q. トラブルになった場合、どこに相談すればいいですか?
A. まず消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談してください。国民生活センターのADRを利用する道もありますが、強制力はありません。訴訟は立証のハードルが高く、費用対効果の面で慎重な判断が必要です。
Q. 見積もりは何社から取ればいいですか?
A. 2〜3社が現実的です。急いでいる状況では難しいため、可能であれば事前に資料を取り寄せておくことをおすすめします。
Q. 後見人は葬儀費用を本人の口座から払えますか?
A. 払えません。後見人の権限は本人の死亡と同時に終了します(民法111条1項1号)。火葬・埋葬の契約締結のみ民法873条の2第3号で例外的に認められていますが、家庭裁判所の許可が必要です。
—
まとめ|戦うのではなく、事前に備える


家族葬の費用トラブルは、業者が悪意を持っているから起きるとは限りません。
この条件が重なる取引だから起きる、という構造的な問題です。
そして残念ながら、トラブルが起きた後に取り戻すのは難しいのが現実です。ADRには強制力がなく、訴訟は立証のハードルが高い。



だからこそ、防御は事前にしかできません。
7つの確認事項を打ち合わせの場で全部実践するのは、正直に言って大変です。であれば、せめて資料を1社分取り寄せて、数字を1つ持っておく。それだけでも判断はまったく変わります。
私は後見人として3年間、1円単位で支出を説明する立場にいました。それでも葬儀の見積書は難しかった。だからこそ、事前に基準を持つことの意味を、実感を持ってお伝えできます。
PR
急いでいない「今」だから、資料だけ取り寄せておく
この記事で挙げた7つの確認事項を、打ち合わせの場ですべて実践するのは大変です。動揺していて、時間もない。相手はプロ。
だからこそ、事前に数字を1つ持っておくことが最も確実な備えになります。安い業者を探すためではなく、提示された見積もりが妥当かどうかを判断するためです。
「家族葬のこれから」の特徴
- 直葬 86,900円(税込)〜/家族葬プラン 471,900円(税込)〜
- 全国一律価格。必要なものを揃えたパッケージ
- 親会社が葬儀社ではないため、提携先を公平に選定
- 事前の資料請求で葬儀代金 5万円引き
※上記は資料請求割引適用価格です。プラン内容・対応エリアは資料でご確認ください。
資料請求は無料。本人でなくても取り寄せられます。「今は情報収集の段階です」と伝えれば問題ありません。
—
関連記事
—
くじら99(元・成年後見人)
300km離れた認知症の親族のため、働きながら家庭裁判所に選任され、成年後見人を3年間務めました。本人の死後は、判断を相続人である親族にお任せしつつ、葬儀手配の実務をお手伝いしました。1円単位で家庭裁判所に支出を説明する立場から見た「葬儀費用の分かりにくさ」を、体験者としてお伝えしています。
※当サイトは個人の実体験に基づく情報提供であり、法的助言ではありません。個別の状況については専門家にご確認ください。本ページのリンクには広告(PR)を含みます。
出典:鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査」(2024年)/国民生活センター「令和8年度第1回 国民生活センターADRの実施状況と結果概要」
—



