「成年後見支援預金、何がそんなに面倒なの?」
後見人になる前の私もそう思っていました。ところが実際に手続きを始めると、指示書1枚を取得するために家庭裁判所への書類提出から約2週間かかり、その間の急な支出は自腹での立て替えになりました。遠距離(300km)からの対応だったため、金融機関への訪問のたびに有給休暇と往復交通費が消えていきました。
この記事では、成年後見支援預金の仕組みから口座開設・指示書の取り方・引き出しの全手順・落とし穴まで、実際に3年間親族後見人として対応した経験をもとに解説します。他のサイトには書いていない「現場のリアル」をお伝えします。
・成年後見支援預金の仕組みと普通預金との違い
・支援預金と支援信託、どちらを選ぶべきか
・口座開設の全手順と必要書類
・指示書の発行条件・申請方法・使い方
・定期的な資金移動の仕組みと定期報告との連動
・取扱金融機関の選び方(遠距離後見人向けの最適解)
・やらかしやすい落とし穴5選
目次
第1章:成年後見支援預金とは?仕組みと普通預金との違い
1-1. 制度の目的と財産保護の背景
成年後見支援預金(正式名称:後見制度支援預金)とは、成年被後見人(判断能力が低下した本人)の大口財産を、家庭裁判所の監督のもとで安全に管理するための専用口座です。
この制度が生まれた背景には、親族後見人による財産の横領・不正使用問題があります。最高裁判所の統計によると、後見人等による不正事案は年間数十〜数百件規模で発生し続けており、その多くが親族後見人によるものでした。そこで後見制度支援信託に並立・代替する仕組みとして、2018年頃から各金融機関に後見制度支援預金の取扱いが拡大しました。
後見制度支援預金は、「成年後見における預貯金管理に関する勉強会報告書」(厚生労働省)に基づき、金融庁・最高裁判所・法務省の連携により各金融機関が導入した制度です。法律上の強制ではなく、各金融機関が自主的に設けた商品ですが、家庭裁判所から指示があった場合は実質的に開設が求められます。
1-2. 仕組みと普通預金との決定的な違い
一言で言うと、「自由に引き出せるか、家裁の許可が必要か」の違いです。
| 比較項目 | 普通預金 | 成年後見支援預金 |
|---|---|---|
| 引き出しの自由度 | 後見人が自由に対応可 | 家裁の指示書が必要 |
| 開設の目的 | 日常の収支管理 | 大口財産の保管・保護 |
| ATM・ネット取引 | 可能 | 不可(窓口のみ) |
| 家裁への報告義務 | なし | 引き出しのたびに報告・上申が必要 |
| 印鑑の扱い | 届出印で対応 | 専用の届出印が必要(他の口座と分けることを推奨) |
実務上は、「支援預金=本金庫、生活用口座=財布」の役割分担で動かします。財布が足りなくなったとき、本金庫から補充する。その補充のたびに家裁の許可が必要になる——これが支援預金の本質です。
1-3. 後見制度支援信託との違いを先に押さえる
後見制度支援預金と混同しやすいのが「後見制度支援信託」です。名前は似ていますが、仕組みが異なります。
| 比較項目 | 後見制度支援預金 | 後見制度支援信託 |
|---|---|---|
| 性質 | 預金(お金を預けるだけ) | 信託(運用がある) |
| 取扱機関 | 銀行・信用金庫・ゆうちょ等 | 信託銀行(限定) |
| 元本保証 | 預金保険の範囲で保護 | 元本保証あり |
| 手数料 | 比較的低め | 信託報酬がかかる |
| 引き出し条件 | 家裁の指示書が必要 | 家裁の指示書が必要 |
| 利用の柔軟性 | 取扱金融機関が多い | 信託銀行が近くにない地域は不便 |
どちらも「家庭裁判所の指示書が必要」という点は共通です。大きな違いは取扱機関の広さと手数料。地方在住・遠距離対応の場合は、取扱金融機関が多い支援預金の方が使いやすいケースが多いです。詳しい比較は第8章で解説します。
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第2章:誰が使う制度か:対象者・選任後の確認事項
2-1. 利用対象:本人・被後見人・親族後見人の関係
成年後見支援預金を利用できるのは、家庭裁判所から成年後見人(保佐人・補助人を含む)に選任された人が管理する被後見人の財産です。口座の名義は被後見人(本人)のままで、後見人が管理権限を持ちます。
| 関係者 | 役割 | 備考 |
|---|---|---|
| 成年被後見人(本人) | 口座の名義人・財産の所有者 | 判断能力が低下しているため後見人が管理 |
| 成年後見人 | 口座の管理・手続きの実施者 | 家裁の指示書を申請・受領し金融機関で手続き |
| 家庭裁判所 | 監督者・指示書の発行者 | 引き出し・解約・定額設定変更のたびに関与 |
2-2. 専門職後見人と親族後見人で取扱いはどう違うか
後見人の種類によって支援預金の必要性が変わることがあります。
- 専門職後見人(司法書士・弁護士・社会福祉士):後見監督人が不要なケースも多く、支援預金の設置を求められないこともある。ただし財産額が多い場合は設置を指示されることがある。
- 親族後見人:不正リスクを防ぐために支援預金または支援信託の設置を求められることが多い。特に財産額が一定以上の場合はほぼ必須と考えてよい。
最高裁判所は、親族後見人が選任される案件のうち財産額が一定以上の場合、後見制度支援信託または後見制度支援預金の利用を推進しています。家庭裁判所から「支援預金を利用するように」と指示が来た場合は、実質的に従う必要があります。(出典:東京家庭裁判所後見センター vol.20)
2-3. 開始の条件と家庭裁判所の関与が必要な理由
支援預金を開設するためには、家庭裁判所が発行する「指示書」が必要です。後見人が勝手に開設を決めることはできません。流れとしては:
- 家庭裁判所から「支援預金を設置するように」との指示が来る(または後見人から申請する)
- 家裁が指示書を発行する
- 指示書を持参して金融機関で口座を開設する
開設後も、払い戻し・解約・定額自動振込の変更など、あらゆる重要な手続きに家裁の指示書が必要になります。これが支援預金の最大の特徴であり、最大の不便さでもあります。
第3章:メリット・デメリット:使う前に知るべきこと
3-1. 財産保護・使い込み防止・管理のしやすさ
成年後見支援預金のメリットは主に3つです。
- 財産の使い込みを構造的に防げる:指示書がないと引き出せないため、後見人が悪意を持っていても大金を横領しにくい仕組みになっている
- 家庭裁判所が間接的に監視してくれる:報告書・上申書の提出が必要なため、お金の流れが自動的に記録される
- 定期報告書の作成が楽になる:支援預金と生活用口座を分けることで、大きな資金移動が明確に記録され、定期報告書の「収支の突合」が整理しやすくなる
3-2. 指示書が必要になる制約とデメリット
一方、デメリットも明確にあります。
- 急な出費に即対応できない:指示書の発行まで通常1〜2週間かかる。緊急の大きな支出が必要になっても、すぐに動けない
- すべての手続きが窓口対応:ATM・ネットバンキング不可。金融機関の窓口に本人(後見人)が行かなければならない
- 印鑑が必須:登録した印鑑を必ず持参。紛失や取り違えると手続きが完全に止まる
- 書類作成の手間が毎回発生:報告書・上申書・指示書の受領と提出。一連の事務だけで1件あたり1〜2週間の時間がかかる
3-3. 手数料・手間・緊急時対応の注意点
手数料は金融機関によって異なりますが、定額自動振込を設定している場合は振込手数料と取扱手数料が別途かかります。メガバンクより信用金庫の方が手数料が低めのケースが多いです。
第4章:口座開設の全手順:必要書類から窓口手続きまで
4-1. 開設前に準備する書類と確認事項
✅ 口座開設に必要な書類一覧
- 家庭裁判所が発行した指示書(口座開設用)
- 登記事項証明書(後見登記の証明書。法務局で取得。発行後3ヶ月以内のものが一般的)
- 後見人本人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
- 後見人本人の本人確認書類(運転免許証等)
- 被後見人(本人)の本人確認書類(保険証等)
- 支援預金専用の届出印(他の口座の印鑑と分けることを強く推奨)
4-2. 家庭裁判所で指示書を発行してもらう手続き
口座開設のための指示書は、家庭裁判所に申請して発行してもらいます。
- 管轄の家庭裁判所に連絡:担当書記官に「支援預金の口座を開設したい」旨を電話で連絡する
- 必要書類の確認:書記官から口座開設用の報告書・申請書の書式を教えてもらう(各家裁のウェブサイトからダウンロード可能)
- 書類を作成・提出:開設する金融機関名・口座種別・預入予定額等を記載して提出(郵送可)
- 指示書の受領:審査後に指示書が郵送される(通常1〜2週間)
4-3. 金融機関窓口での口座開設・預入の実務
指示書と必要書類が揃ったら、金融機関の窓口で手続きを行います。
- 事前に金融機関に電話で「後見制度支援預金の開設に来たい」と伝えて予約を入れる(飛び込みは断られることがある)
- 窓口で指示書・登記事項証明書・印鑑等を提示する
- 所定の申込書類に記入・押印する
- 生活用口座からの定額自動振込の設定も同時に行う(設定する場合)
- 通帳・キャッシュカード(※カード発行がない場合が多い)を受け取る
私の場合、口座開設の当日は銀行の窓口で約1時間かかりました。書類の確認・申込書の記入・管理者への確認等で時間がかかります。午前中の早い時間帯に予約を入れ、他の手続き(登記事項証明書の取得等)と組み合わせて1日で完結させるのが効率的です。
第5章:指示書とは何か:発行条件・取得手順・使い方の全手順
5-1. 指示書が必要になる場面とその理由
指示書は支援預金に関わるほぼすべての重要な手続きに必要です。
| 手続きの種類 | 指示書の要否 |
|---|---|
| 口座の開設 | 必要 |
| 払い戻し(引き出し) | 必要 |
| 定額自動振込の開始・変更・解約 | 必要 |
| 口座の解約 | 必要 |
| 生活用口座への定額振込(設定済み) | 不要(設定変更時は必要) |
| 残高照会 | 不要 |
5-2. 家庭裁判所への報告書(払戻し)の書き方
払い戻しが必要な場合、まず家庭裁判所に「報告書(払戻し)」を提出します。書式は管轄の家庭裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。記載する主な内容:
- 払い戻しが必要な理由(例:高額な税金の支払い・医療費の立替精算等)
- 払い戻し金額と使途
- 払い戻し後の残高の見通し
- 現在の財産状況(財産目録の最新版)
「なぜ必要か」「いくら必要か」「払い戻し後の財産はどうなるか」を具体的に書く。担当書記官が変わっても伝わるよう、事情を一から説明する前提で記載してください(定期報告書と同じ考え方)。
5-3. 指示書発行から金融機関での引き出しまでの全手順
| ステップ | 内容 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| ① 報告書(払戻し)を作成 | 使途・金額・理由を記載して家裁に提出(郵送可) | 書類作成:1〜2時間 |
| ② 家裁が審査・指示書を発行 | 問題なければ指示書が郵送で届く | 1〜2週間 |
| ③ 金融機関で手続き | 指示書・登記事項証明書・届出印を持参して窓口へ | 窓口で30〜60分 |
| ④ 払い戻し完了 | 指定口座(生活用口座)に振り込まれる | 当日〜翌営業日 |
| ⑤ 家裁に上申書を提出 | 通帳コピーを添付して完了報告 | 書類作成:30分 |
5-4. 指示書使用後:家裁への上申書の提出
払い戻し後は、家庭裁判所に「上申書」を提出して完了報告を行います。添付書類は通帳のコピー(払い戻し前後の残高が確認できるページ)です。これを怠ると次回の定期報告で問題になる可能性があるため、払い戻し完了後は速やかに提出してください。
第6章:引き出し・送金・定期移動・解約の実務
6-1. 払い戻し・送金で指示が必要になるケース
前章で解説した通り、払い戻しは原則として指示書が必要です。ただし、口座開設時に「定額自動振込」を設定している場合は、設定した金額・頻度・振込先の範囲内であれば指示書なしで自動的に移動します。
指示書が改めて必要になるのは:
- 定額自動振込の金額・頻度・振込先を変更したい場合
- 定額以外の臨時の払い戻しが必要な場合
- 口座を解約したい場合
6-2. 定期的な生活費移動と自動振込の設定
支援預金の実務で最も効率的な運用方法は、口座開設時に「定額自動振込」を設定することです。私の場合は半年に1回、生活用口座に一定額が自動で振り込まれるよう設定しました。
① 直近半年間の定期報告書から月平均支出を算出
② 半年分の必要額(月平均×6ヶ月)を計算
③ 多少の余裕(1〜2ヶ月分)を加算
④ この金額を「次の半年分の振込額」として設定
→ 設定変更のたびに指示書が必要なので、少し多めに設定しておく方が手間が少なくて済みます
6-3. 解約・名義変更・相続発生時の注意点
後見人の役割は被後見人(本人)が亡くなった瞬間に終了します。それと同時に支援預金の管理義務も終わりますが、口座の解約手続きは必要です。
- 解約の手続き:家裁の指示書を取得し、金融機関の窓口で解約。残高を相続人(または相続財産管理人)に引き渡す
- ゆうちょ銀行の場合:「解約には家庭裁判所が発行する指示書が必要」(ゆうちょ銀行公式)
- 通帳と書類の保管:解約後も通帳・領収書・指示書は最低5年間保管することを推奨。後から相続人や家裁から問い合わせが来ることがある
第7章:取扱金融機関の選び方:遠距離後見人に信用金庫が最強な理由
7-1. 取扱金融機関の種類と探し方
現在、後見制度支援預金は以下の金融機関で取り扱われています。
| 金融機関の種類 | 代表例 | 取扱状況 |
|---|---|---|
| メガバンク | 三菱UFJ・みずほ・三井住友 | 2019年以降順次導入。全国展開 |
| ゆうちょ銀行 | ゆうちょ銀行 | 「後見制度支援貯金」として取扱い。全国の直営店で対応 |
| 地方銀行 | 各地方銀行 | 対応状況は銀行による。事前確認が必要 |
| 信用金庫 | 全国の信用金庫 | 早期から導入。地域密着で対応が丁寧 |
| 農業協同組合(JA) | 全国のJA | 2019年以降導入 |
取扱金融機関の一覧は管轄の家庭裁判所に問い合わせるか、開設を検討している金融機関に直接確認するのが確実です。
7-2. ゆうちょ・信託銀行・地方銀行・信用金庫の比較
| 金融機関 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| ゆうちょ銀行 | 全国どこにでも窓口がある。手続きの標準化が進んでいる | 直営店のみ対応(郵便局では不可の場合あり) |
| メガバンク | 全国展開。定額自動送金サービスが整備されている | 窓口の混雑。対応がマニュアル的になりやすい |
| 地方銀行 | 地域に根ざした対応 | 取扱い未対応の銀行もある。事前確認必須 |
| 信用金庫 | 「しんきんATMゼロネット」で遠方からの記帳が可能。担当者との関係が作りやすい | 支店が地域限定 |
7-3. 遠距離後見人が信用金庫を選ぶべき理由
私が遠距離(300km)の後見人として最も助かったのが、信用金庫の「しんきんATMゼロネットサービス」です。
通常、他行のATMで通帳記帳をすることはできません。しかし信用金庫には全国の信用金庫のATMで相互に通帳記帳・入出金ができるネットワークがあります。つまり、300km離れた「Aの地元の信用金庫」の通帳を、私が住む近所の「別の信用金庫のATM」に入れて記帳できたのです。
定期報告書の作成には毎月の通帳記帳が欠かせません。この機能があるだけで、年間数回の「記帳のためだけの遠征」が不要になります。遠距離後見人にとっては、これだけで信用金庫を選ぶ価値があります。
7-4. 金融機関選びで失敗しない7つのチェックポイント
✅ 金融機関選びのチェックリスト
- 後見制度支援預金の取扱いがあるか(電話で事前確認)
- 生活用口座と同じ金融機関で作れるか(振込の手間が減る)
- 定額自動振込サービスに対応しているか
- 遠方から通帳記帳ができるか(しんきんATMゼロネット等)
- 後見業務の担当者がいるか・対応が丁寧か
- 窓口の営業時間と訪問しやすさ
- 手数料の水準(定額自動振込の振込手数料を確認)
第8章:後見制度支援預金と後見制度支援信託の違いを比較
8-1. 仕組み・管理方法・手数料の違い
支援預金と支援信託は「家裁の指示書が必要」という点は共通ですが、性質が異なります。
| 比較項目 | 後見制度支援預金 | 後見制度支援信託 |
|---|---|---|
| 性質 | 預金(保管が目的) | 信託(運用が目的) |
| 取扱機関 | 銀行・信用金庫・ゆうちょ・JA等(広範) | 信託銀行のみ(限定) |
| 元本保証 | 預金保険制度の範囲内 | 元本保証あり |
| 運用益 | 預金利息のみ(ほぼゼロ) | 信託運用による利益あり(わずか) |
| 初期費用 | 基本的になし | 信託契約時の費用が発生する場合あり |
| 継続手数料 | 振込手数料等のみ | 信託報酬が継続的に発生 |
8-2. 信託銀行を使う場合の特徴
信託銀行(三菱UFJ信託・みずほ信託・三井住友信託等)を使う場合の特徴:
- 信託報酬(年間3,000円程度)が継続的にかかる
- 信託銀行の店舗は地方に少なく、遠距離の場合は不便なことがある
- 支援信託に対応できる専門家(弁護士・司法書士)が手続きに関与する必要がある場合がある
8-3. どちらが向いているか:財産額・状況別の判断基準
| 状況 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| 遠距離から後見を担当している | 支援預金(信用金庫) | しんきんATMゼロネットで通帳記帳が遠方からできる |
| 地元に信託銀行がある・財産が非常に多い | 支援信託も選択肢 | 信託の方が管理が厳格で安心な場合がある |
| できるだけ手数料を抑えたい | 支援預金 | 信託報酬がかからない |
| 家裁からどちらでもいいと言われた | 支援預金 | 手続きの柔軟性・金融機関の選択肢が広い |
第9章:実体験ベースで見る落とし穴と失敗しない進め方
9-1. 急な出費に対応できない(指示書まで約2週間)
最大の落とし穴は、「お金はあるのに出せない」状況が起きることです。支援預金に数百万円あっても、指示書がない限り一円も引き出せません。
対策:
- 生活用口座に常に2〜3ヶ月分の生活費を確保しておく
- 「次の半年で大きな支出が予想される」場合は早めに家裁に報告書を提出する
- 年1回の定期報告のタイミングで、翌年の支出予定を把握しておく
9-2. 遠距離だと金融機関訪問コストが跳ね上がる
私の場合、支援預金の手続き1回あたりの実費(交通費)は往復で数万円かかりました。指示書を使った払い戻しが年3回あれば、それだけで10万円近い交通費が発生します。これが報酬申立の際の「付加報酬(遠距離実務)」の根拠にもなりますが、事前の計画で回数を最小化することが重要です。
対策:
- 定額自動振込を設定し、臨時の払い戻し回数を年1〜2回に抑える
- 払い戻し・登記事項証明書の更新・通帳記帳を「同じ日にまとめて処理する」段取りを習慣化する
9-3. 印鑑を取り違えると全手続きが止まる
支援預金には専用の届出印が必要です。私は「成年後見人業務専用」の印鑑を1本作り、他の印鑑と完全に分けて管理しました。
9-4. 残高計算を誤ると定期報告で1円の狂いが生じる
支援預金と生活用口座の間で資金移動が発生するたびに、両方の通帳に記録が残ります。定期報告では「右のポケットから左のポケットにお金を移しただけ」であることを、両通帳の記録で証明しなければなりません。
対策:
- 資金移動のたびに両口座の通帳をその日のうちに記帳する
- 定期報告書の収支補助シートに、移動日・金額・移動先を即日入力する
- 定額自動振込の振込日と生活用口座への入金日がズレる(翌営業日になる等)場合は、備考欄に日付を明記する
9-5. 家裁への記録・監督・保護を意識した管理方法
支援預金の管理で最も重要な心構えは、「後から誰が見ても説明できる記録を残す」ことです。担当書記官は毎年変わります。前任と口頭で合意した内容も、後任には伝わりません。
✅ 記録管理のチェックリスト
- 全ての指示書・報告書・上申書のコピーをファイリングして保管
- 払い戻し前後の通帳コピーを時系列で保管
- 定額自動振込の設定内容(金額・頻度・振込先)を記録しておく
- 家裁との電話・窓口でのやり取りは日時と内容をメモする
- 書類一式は後見終了後も5年間保管する
後見が終わった後の相続手続きが即座に始まります
後見人の役割は本人が亡くなった瞬間に終わります。しかし家族にはすぐ「戸籍収集・名義変更・相続税申告(10ヶ月期限)」が待っています。後見業務で疲弊しきった状態でこれを自力でこなすのは本当に大変です。今から相談だけでもしておくことを、経験者として強くすすめます。
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よくある質問(FAQ)
Q指示書なしで引き出しできますか?緊急時はどうすればいいですか?
原則としてできません。定額自動振込の設定範囲内は指示書不要ですが、臨時の払い戻しには必ず指示書が必要です。緊急の場合は、まず生活用口座で対応し、後見人が立て替えて後から精算する方法が現実的です。
Q手数料はいくらかかりますか?最低預入金額の決まりはありますか?
手数料は金融機関によって異なります。定額自動振込を設定する場合は振込手数料と取扱手数料が発生します。最低預入金額も金融機関によって異なるため、開設前に窓口で確認してください。
Qゆうちょ銀行でも使えますか?
使えます。ゆうちょ銀行では「後見制度支援貯金」という名称で取り扱っています。ただし直営店での手続きが必要で、一般の郵便局では対応していないことがあります。事前に直営店に確認してください。(参考:ゆうちょ銀行「後見制度支援貯金」)
Q本人が亡くなった後、口座はどうなりますか?
後見人の権限は本人死亡と同時に終了します。支援預金の口座は解約が必要で、残高は相続人(または相続財産管理人)に引き渡します。解約には家庭裁判所の指示書が必要です。解約後の通帳・書類は最低5年間保管することを推奨します。
Q司法書士など専門職に相談すべきケースはどんな場合ですか?
以下のような場合は専門家への相談を検討してください。①支援預金の設置について家裁から指示があったが手続きが分からない、②払い戻し申請を繰り返しているうちに収支の管理が複雑になった、③後見を辞任したい・後任への引き継ぎが必要、④本人死亡後の相続手続きをどう進めるか分からない。
Q支援預金は必ず作らないといけませんか?
家庭裁判所から指示があった場合は実質的に従う必要があります。指示がない場合でも、財産額が多い場合や家裁から推奨された場合は設置を検討してください。専門職後見人が選任されている場合は不要なケースもあります。
この記事を書いた人
※ 当サイトは個人の実体験に基づく情報提供であり、法的助言ではありません。支援預金の取扱条件・手数料・必要書類は金融機関および家庭裁判所によって異なります。個別の手続きは必ず管轄の家庭裁判所・金融機関・専門家にご確認ください。本ページのリンクには広告(PR)を含みます。出典:厚生労働省「成年後見における預貯金管理に関する勉強会報告書」/東京家庭裁判所後見センター vol.20/三菱UFJ銀行・ゆうちょ銀行公式サイト
