成年後見人の定期報告|必要書類一覧・書式ダウンロード先・記入例【元後見人が解説】

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こんにちは。元・成年後見人のくじら99(@9jira99)です。

この記事では、成年後見人が年1回必ず行う定期報告(後見等事務報告)の「必要書類の一覧」「書式のダウンロード先」「財産目録・収支状況報告書の書き方(記入例つき)」「提出時期と提出方法」を、実際に後見人を3年間務めた経験者がすべて解説します。

「何を出せばいいのか分からない」「書式はどこにあるのか」「1円合わなくて発狂しそう」——そんな全国の親族後見人の悩みに、私の実体験と血の滲むような失敗から編み出したノウハウで答えます。これから初めての定期報告を迎える方は、ぜひこの記事をブックマークして、何度も読み返してください。

くじら99

この記事を書いた人:くじら99(元 成年後見人)

遠方(300km以上)に住む認知症の親族のため、働きながら家庭裁判所に選任され成年後見人を務めた経験を持つ会社員。

免責事項

当サイトは個人の成年後見業務の実体験に基づく情報提供であり、法的なアドバイスを行うものではありません。個別具体的な手続きについては、弁護士・司法書士などの専門家や管轄の家庭裁判所等へご相談ください。

成年後見人の定期報告|必要書類一覧【チェックリスト】

まず結論から。定期報告で家庭裁判所に提出する書類は、以下の通りです。ご自身の状況に合わせてチェックしてください。

提出書類必須?内容
① 後見等事務報告書必須1年間の事務の総括。本人の生活状況・健康状態(身上保護)の報告欄もここにある
② 財産目録必須基準日(報告対象期間の末日)時点の全財産の一覧(預貯金・現金・不動産・保険など)
③ 収支状況報告書必須1年間の収入(年金など)と支出(施設費・医療費など)の明細
④ 通帳のコピー必須報告対象期間の全ページ。本人名義の全口座分
⑤ 領収書・レシートのコピー必須本人の財産から支払った支出の裏付け資料(ナンバリングして通帳と紐付ける)
⑥ 金銭出納帳(収支補助シート)裁判所による裁判所のエクセル書式に含まれることが多い。日々の入出金の明細
⑦ 報酬付与申立書+事情説明書任意(推奨)後見人としての報酬を受け取るための申立て。定期報告と同時提出がベスト
⑧ 上申書必要時のみ報告時期の変更依頼や、特殊な支出の事情説明など

⚠️ 注意:必要書類の細かい構成や様式は管轄の家庭裁判所によって異なります。必ず、裁判所から届いた案内(定期報告のお願い)と、管轄裁判所のホームページで最新の書式を確認してください。

定期報告の書式ダウンロード先(管轄裁判所別)

「後見等事務報告書」「財産目録」「収支状況報告書」は、管轄の家庭裁判所ごとに指定のフォーマット(書式)があります。必ず自分の管轄裁判所のホームページから、Excel(エクセル)形式の書式をダウンロードして使用してください。

  • 裁判所「後見ポータルサイト」:裁判所の公式サイト内にある全国共通の入口ページです。「後見ポータルサイト」で検索すると一番上に出てきます。ここから各地の家庭裁判所の書式ページに辿れます。
  • 東京家庭裁判所(後見サイト):書式と記載例が全国で最も充実しています。「東京家裁 後見 書式」で検索してください。ただし東京家裁の管轄でない方は、あくまで記載例の参考として見るにとどめましょう。
  • その他の管轄裁判所:「(管轄の家庭裁判所名) 後見 書式」で検索するか、後見ポータルサイトから辿ってください。裁判所から届いた定期報告の案内文書に、書式ページのURLやQRコードが記載されていることもあります。

絶対にやってはいけないのは、「送られてきた紙の書類に、電卓を叩きながら手書きで記入していくこと」です。

計算ミスをしたり、書き損じたりして修正テープだらけになり、確実に心が折れます。

エクセルであれば自動で計算式が入っているため、「1円の計算ズレ」を防ぐことができます。

💡 他の管轄の書式を流用するのはNGです。同じ「財産目録」でも項目立てが微妙に違うことがあり、差し戻しの原因になります。

定期報告の提出時期はいつ?【変更できる裏ワザあり】

定期報告は「1年に1回」ですが、具体的に「何月に提出するのか」は、あなたが成年後見人に選任された(就任した)月がベースになります。

例えば、10月に選任された場合、翌年の10月(または11月上旬)が毎年の報告月として家庭裁判所から指定されます。

しかし、ここにご家族(特に現役世代のサラリーマン)を苦しめる大きな罠があります。

サラリーマンの繁忙期と報告月が重なる絶望

私のケースをお話ししましょう。私が成年後見人として登記され、初回の報告を終えて「報告月」として裁判所から指定されたのは、なんと「12月末〜1月」でした。

そう、私の本業(サラリーマン)における「年間で最も忙しい年末年始・決算期」と、1円単位のエクセル作業を強いられる「定期報告」の時期が見事にバッティングしてしまったのです。

忘年会、年末の挨拶回り、仕事の納め、そして正月休み。その合間を縫って、銀行の窓口が閉まる前に通帳を記帳し、1年分の領収書を整理する。

……想像しただけで発狂しそうになりました。

家庭裁判所へ「報告時期の変更」を上申する

「このままでは本業に支障が出るし、精神的に持たない」と判断した私は、初回の報告が終わった後、家庭裁判所の担当書記官に電話で相談しました。

「申し訳ありません。現在の報告指定月(1月)は、私の仕事の最繁忙期であり、正確な報告書を作成する時間を確保するのが困難です。つきましては、仕事が落ち着く『GW(ゴールデンウィーク)明けの5月』に、毎年の報告時期を変更していただけないでしょうか?」

すると書記官は、

「分かりました。では、次回の報告を一旦『〇月』までの短い期間で区切って提出していただき、それを起点にして、翌年からはご希望の5月に変更しましょう。その旨を記載した『上申書(じょうしんしょ)』を提出してください」

と、あっさりと変更を認めてくれました。

【くじら99の教訓】
定期報告の時期は、正当な理由があれば家庭裁判所に相談して変更が可能です。自分の仕事の繁忙期や、確定申告の時期などと重なって苦しい場合は、無理をして抱え込まず、すぐに裁判所に相談して「自分が一番作業しやすい時期」に変更してもらいましょう。

そもそも定期報告(後見等事務報告)とは?基本ルール

ここで、定期報告とは一体何なのか、その基本ルールを押さえておきましょう。

成年後見人は、ご本人の全財産を預かるという強大な権限を持っています。

その権限が正しく使われているか、親族による財産の横領(使い込み)が起きていないかをチェックするために、家庭裁判所が定期的な報告を義務付けています。

成年後見人は、就任後遅滞なく財産目録を作成し、その後も定期的に(原則として1年に1回、家庭裁判所が指定した時期に)、ご本人の財産状況や生活状況を記載した「後見等事務報告書」を作成し、裏付け資料とともに家庭裁判所に提出しなければなりません。

出典:[裁判所「成年後見人等の仕事(定期報告)」より要約]

これをサボることは絶対に許されません。弁護士や司法書士などのプロの職業後見人にとっても、この定期報告が「仕事のすべて」と言っても過言ではありません。いわば「家庭裁判所への通信簿の提出」です。

何を報告するのか?(3つの柱)

  1. 財産の報告(財産目録):「〇月末日時点」での、すべての銀行口座の残高、現金、不動産などの一覧。
  2. 収支の報告(収支状況報告書):1年間でいくら収入(年金など)があり、いくら支出(施設代、医療費など)があったのかの明細。
  3. 生活の報告(身上保護の報告):現在ご本人がどこで生活しているか、健康状態(体調の変化)はどうなっているか、後見人として面会に行ったかなどのレポート。

これを、1円のズレも許されず、すべての領収書と通帳のコピーを証拠として突き合わせて提出するのが、定期報告の正体です。

財産目録の書き方【記入例つき】

財産目録は、報告対象期間の末日(基準日)時点でのご本人の全財産を一覧にするものです。書き方のポイントは以下の通りです。

  • 預貯金:金融機関名・支店名・口座種別・口座番号・基準日残高を、通帳を記帳したうえで1円単位で転記する。本人名義の口座はすべて記載(成年後見支援預金・支援信託の口座も含む)。
  • 現金:後見人が手元で管理している現金があれば、その残高。基本的には手元現金は最小限にしておくのが管理上も安全です。
  • 不動産:実家(空き家)などがあれば、登記事項証明書どおりの所在・地番で記載。年度内に売却した場合は、その旨と売却代金の入金先を「事情説明」で必ず補足。
  • 保険・有価証券・負債:生命保険(証券番号・保険会社)、株式など。借金(負債)がある場合も隠さず記載。

💡 前回報告時の残高との「つながり」がチェックされます。前回の財産目録の残高から、今回の収支状況報告書の収支差引を反映すると、今回の財産目録の残高にピタリと一致する——この整合性が取れているかを、裁判所は最初に見ます。

収支状況報告書の書き方【記入例つき】

収支状況報告書は、1年間の「収入の部」と「支出の部」を費目ごとに集計するものです。

  • 収入の部:年金(国民年金・厚生年金は振込通知書や通帳の入金額から)、保険金、不動産売却代金など。
  • 支出の部:施設費、医療費、水道光熱費、日用品費、税金、後見事務費(交通費・コピー代・切手代など)。
  • 口座間の資金移動は「収入・支出」に含めない:支援預金から生活口座への振込は「右のポケットから左のポケットへ移しただけ」なので、収支ではなく資金移動として整理します(詳細は後述)。

「金銭出納帳(収支補助シート)」が年末の自分を救う

裁判所のエクセルファイルの中には、多くの場合「金銭出納帳(あるいは収支補助シート)」という、家計簿のような別シートが用意されています。

これに、毎月末、通帳を見ながら「〇月〇日・摘要(施設費)・出金150,000円」と入力していくのです。

「報告月になってから1年分をまとめて入力しよう」などと甘い考えを持ってはいけません。

毎月1回の記帳に合わせて、エクセルへの入力もその日のうちに終わらせる。これを12ヶ月間コツコツと続けるだけで、定期報告の負担は10分の1に激減します。

🏠 財産目録に「空き家になった実家」がある方へ
後見人が居住用不動産を売却するには家庭裁判所の許可が必要で、申立てには客観的な査定書が求められます。売れない実家の手放し方と許可申請の実務をまとめました。
▶ 空き家が売れない理由と手放す方法|家裁の許可と査定書の取り方まで解説

通帳と領収書の「突合(ナンバリング)」のやり方

エクセルでの収支入力が終わり、「よし、これで提出できる!」と安心するのはまだ早いです。

定期報告の提出準備において、私が「すごい面倒くさいですが……」と本音を漏らさずにはいられない、最後の地獄の作業が待っています。

それが、【通帳のコピーと領収書の突合(とつごう)作業】です。

裁判所は「証拠」がすべて

家庭裁判所の書記官は、あなたが提出したエクセルの収支報告書を、ただ漫然と読むわけではありません。

「報告書に書かれた数字」=「通帳の入出金履歴」=「領収書の金額」

この3つが完全に一致しているかを、探偵のように厳しくチェックします。

裁判所の人に「この通帳から引き出された15万円は、一体どの領収書に該当するの?」と迷わせないために、こちら側で「ナンバリング(番号振り)」をしてあげる必要があるのです。

具体的なナンバリングの手順(くじら99流)

  1. 通帳を全ページコピーする:報告期間(1年間)の通帳のページをすべてA4用紙にコピーします。
  2. 出金履歴に番号を振る:通帳コピーの「出金」の横に、赤いボールペンで「①、②、③…」と通し番号を振っていきます。(※毎月定額で落ちる施設費用などは「施-1、施-2」などでもOKです)。
  3. 領収書(コピー)にも同じ番号を振る:該当する領収書の右上にも、同じように赤いボールペンで「①、②、③…」と番号を振ります。
  4. 収支補助シートにも記載する:エクセルの備考欄にも、この番号を打ち込んでおきます。

【なぜ面倒なのか?「立て替え」の精算問題】

特に面倒なのが、私が後見人として交通費(切符代)や事務用品(ファイル代、コピー代)などを「立て替え払い」し、後からAさんの口座から引き出して精算したケースです。

例えば、「切符代800円」と「ファイル代200円」を別々の日に立て替え、後日まとめて「1,000円」を口座から引き出したとします。

この場合、通帳の出金「1,000円」の横に【④】と書き、2枚の領収書(800円と200円)の両方に【④】と書く必要があります。

この作業を1年分まとめてやろうとすると、間違いなく発狂します。だからこそ、後述する「日頃からの領収書整理」が命綱になるのです。

お金だけじゃない!「身上保護(生活状況)」の報告の書き方

成年後見人の仕事は、財産管理だけだと思われがちですが、もう一つの重要な柱があります。それがご本人の生活や健康を守る「身上保護(しんじょうほご)」です。

定期報告書(後見等事務報告書)のフォーマットには、必ず「被後見人の生活状況・健康状態」を記載する欄があります。

何を報告すればいいのか?

  • 居住場所:現在どこで生活しているか(〇〇特別養護老人ホームなど)。
  • 面会の頻度:この1年間で、後見人として何回施設に面会に行ったか。電話などで状況確認をしたか。
  • 健康状態の変化:入院や手術はあったか。要介護度に変化はあったか(要介護3から4に上がった、など)。
  • 今後の見通し:現在の施設での生活を継続する予定か、転居の必要性があるか。

離れて暮らしていると、頻繁に面会に行くことは難しいかもしれません。

しかし、「施設に入りっぱなしで放置している」と思われないよう、定期的に施設のケアマネージャーや相談員に電話をして様子を聞き、その記録(〇月〇日、施設長と電話面談等)を残しておくことが大切です。

ご本人の体調に大きな変化(入院など)があった場合は、この報告書で詳細に伝え、今後の介護費用の増加予測なども共有しておきましょう。

提出方法:レターパックの活用と「到着確認」の電話

すべての書類(報告書、通帳コピー、領収書コピー、報酬付与申立書)が完璧に揃ったら、いよいよ家庭裁判所へ提出します。

提出は「レターパック(赤)」が最強

裁判所の窓口に直接持っていくことも可能ですが、平日に休みを取るのは大変です。私はいつも郵送で提出していました。

郵送する場合は、普通郵便ではなく郵便局の『レターパックプラス(赤色)』を強くお勧めします。

  • 追跡番号がついているため、「裁判所に届いたか」がスマホで確認できる。
  • 対面手渡し(受領印あり)なので、超重要な個人情報が紛失するリスクが極めて低い。
  • 分厚い領収書の束を入れても、封が閉まれば全国一律料金で送れる。

提出後のリアル:「便りのないのは良い知らせ」

レターパックをポストに投函し、追跡サービスで「お届け先にお届け済み」となったのを確認したら、私は念のため、家庭裁判所の担当書記官に「電話」を入れるようにしていました。

「成年後見人のくじら99ですが、昨日、定期報告書一式を郵送いたしました。無事に届いておりますでしょうか?」

くじら99

なぜわざわざ電話をするのか?

実は家庭裁判所は、提出された報告書をチェックして「何も問題がなければ、一切の連絡をしてこない(受領の通知すら来ない)」のがデフォルトだからです。

提出して1ヶ月経っても何も連絡がないと、「あれ? 届いてない? それとも今、厳しい審査が行われていて、後で怒られるの?」と不安で夜も眠れなくなります。

「はい、確かに受け取っております。これから審査しますので、不備があればご連絡しますね」という言葉を直接聞くだけで、精神的ストレスが激減します。問題がなければ、そのまま「今年の業務」は終了です!

【経験者の管理術】1年間ラクをする領収書・通帳ルーティン

ここからは、報告月に泣かないための「日々の準備」の話です。定期報告をスムーズに終わらせるための最大の鍵は、「日頃の領収書管理」と「通帳の記帳」をどれだけサボらずにやっているかに尽きます。

これを怠ると、報告月の直前になって「3万円の使途不明金がある!合わない!」と、深夜に電卓を叩きながら泣き叫ぶことになります。

1. 領収書の保管と「カテゴリー分けファイリング」

成年後見人は、ご本人の財産から支払ったお金の「すべての領収書・レシート」を証拠として保管し、報告書に添付する義務があります。

これらを財布や引き出しにポイポイと適当に入れていると、後で地獄を見ます。

私は100円ショップで「じゃばら式のファイル(仕切りがたくさんあるクリアケース)」を買い、そこに以下のカテゴリー(費目)ごとにラベルを貼って、支払ったその日のうちに分類して保管していました。

  • 医療費:病院の診察代、薬局のレシート
  • 施設費:特別養護老人ホームからの毎月の請求書と領収書
  • 水道光熱費:実家(空き家)の電気代、水道代の払込受領証
  • 日用品費:おむつ、ティッシュ、衣類などを買った時のレシート
  • 後見事務費:私が後見人として動いた際の交通費(切符代)、コピー代、切手代、住民票の取得費用など

⚠️ 警告:コンビニレシートの印字は消える!
未払いの公共料金や日用品をコンビニで支払った際に受け取る「感熱紙のレシート」は、時間が経つと文字が薄くなって消えてしまいます。後になって「これは何の支払いだったっけ?」となるのを防ぐため、レシートは必ずすぐにA4のコピー用紙に糊で貼り付け、横にボールペンで「〇月分 おむつ代」とメモを書き込んでおくことを強くお勧めします。

2. 通帳の記帳は「毎月のルーティン」にする

通帳の記帳を数ヶ月サボると、合算されて「オマトメ」と印字されてしまい、何にいくら使ったのかが完全に追えなくなります。(※こうなると銀行の窓口に行って「取引明細証明書」を有料で発行してもらうという罰ゲームが待っています)。

通帳の記帳は、最低でも「月に1回」は必ず行う習慣をつけてください。

生活費の支払い、施設からの引き落とし、年金の入金など、記帳するたびに「〇月分 施設代」と通帳の余白に鉛筆で書き込んでおくと、年末の集計作業が劇的に楽になります。

💡 遠距離介護の神機能!「信用金庫」のATM相互利用

ここで、300km離れた実家の財産を管理していた私から、遠距離介護の方に向けた「金融機関選びの強烈なアドバイス」をお伝えします。

前回の記事で、私はご本人の生活決済用口座として、大手のメガバンクではなく「地元の信用金庫」を選びました。実はこの選択が、通帳の記帳において奇跡的なファインプレーとなったのです。

メガバンクや地方銀行は、遠方に住んでいると「自宅の近くに支店やATMがないから記帳ができない!」という事態に陥りがちです。

しかし、信用金庫には「全国の信用金庫のATMで、他の信用金庫の通帳記帳や入出金が相互にできる(しんきんATMゼロネットサービス等)」という神のようなネットワークが存在します。

つまり、300km離れた「Aさんの地元の信用金庫」の通帳を、私が住んでいる「自宅の近所にある全く別の信用金庫」のATMに突っ込んでも、普通にジージーと記帳ができたのです!

これは遠方で後見人を務める私にとって、交通費と時間を節約する最強のメリットでした。成年後見支援預金に対する理解も深い傾向があるため、決済口座に迷ったら「信用金庫」を選ぶことを強くお勧めします。

3. 「支援預金」からの資金移動の管理

Aさんの大金は、家庭裁判所の許可がないと引き出せない「成年後見支援預金(ロックされた口座)」に入っています。

そこから、毎月の施設代などで足りなくなった分を補うため、半年に1回ほどのペースで家裁に許可を取り、一定額(例:50万円)を生活用口座に振り込んでもらっていました。

この「口座間の資金移動」も、定期報告の際には「右のポケットから左のポケットにお金を移しただけ」ということを明確に証明しなければなりません。

両方の通帳の「出金履歴」と「入金履歴」が日付と金額で完全に一致しているか、常に確認する癖をつけておきましょう。

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自分の苦労に報いる!「報酬付与申立て」の同時提出

さて、ここまで血の滲むような思いで財産を管理し、地獄の書類作成を乗り越えてきたあなたに、大切なお知らせがあります。

成年後見人の仕事は、決して「ボランティア(タダ働き)」ではありません。

弁護士や司法書士などの専門職が後見人になれば、ご本人の財産から毎月報酬が支払われます。そしてこれは、親族が後見人を務めている場合でも同様に、報酬を受け取る権利があるのです。

家庭裁判所は、後見人等及び本人の資力その他の事情によって、本人の財産の中から、相当な報酬を後見人等に与えることができる(民法第862条)。

報酬をもらうためには「自分から申立てる」必要がある

ただし、黙っていても裁判所から「お疲れ様!〇〇万円振り込んでいいよ!」と言われることは絶対にありません。

報酬をもらうためには、自ら家庭裁判所に対して『報酬付与申立て(ほうしゅうふよもうしたて)』という手続きを行う必要があります。

そして、この申立てを行うベストなタイミングこそが、「年に1回の定期報告書の提出と【同時】に行う」ことなのです。

どうやって申立てるの?

管轄の裁判所のホームページから、以下の2つの書類をダウンロードして記載します。

  1. 報酬付与申立書
  2. 報酬付与申立事情説明書

事情説明書には、「この1年間で、不動産売却の手続きに奔走した」「遠方の実家の片付けのために何度も足を運んだ」など、自分がどれだけ苦労して後見業務を行ったかを具体的にアピールして書きます。

これを定期報告書と一緒に提出することで、裁判官が「この1年の働きぶりと、本人の財産状況」を総合的に評価し、報酬額(例:年間10万円〜数十万円など)を決定して『審判書』を送ってくれます。

(※その審判書が届いて初めて、ご本人の口座から自分の口座へ報酬額を振り込むことができます)。

自分の正当な働きに対する対価です。遠慮せずに、必ず定期報告と一緒に申立てを行いましょう!

📌 後見が終了したとき、報酬と財産の引き継ぎはどうなる?
被後見人が亡くなった後の預金引き出しの可否・財産引き継ぎ・家裁への終了報告・最後の報酬付与申立てまで解説しています。
▶ 被後見人が死亡したら後見人がやること|預金引き出し・財産引き継ぎ・家裁報告の手順

事件番号と「担当官(書記官)」の異動に注意せよ

定期報告の準備を進める中で、家庭裁判所と電話でやり取りをすることが増えてきます。「この領収書はどう処理すればいいか?」といった質問をする際、スムーズに話を進めるための2つのコツをお伝えします。

1. 「事件番号」は常に手元に置いておく

家庭裁判所に電話をかけると、必ず最初に聞かれるのが「事件番号(じけんばんごう)」です。

「令和〇年(家)第〇〇〇〇号」という、一番最初に申立てをした時に付与されたあの番号です。

裁判所には毎日膨大な数の案件が動いているため、「Aの成年後見人のくじら99ですが」と名前を名乗っても、すぐにはカルテ(ファイル)を出せません。スマホのメモ帳や、手帳の表紙など、すぐに確認できる場所にこの事件番号を控えておきましょう。

2. 担当官(書記官)は「毎年変わる」と心得よ

これは裁判所というお役所の宿命ですが、あなたの案件を担当してくれている担当官(書記官)は、定期的な人事異動により、早ければ1年、長くても数年で別の担当者に変わってしまいます。

前任の担当官と「この不動産の売却の件は、こういう事情だからこういう処理でいいですよね」と口頭で合意していた特殊な事情も、担当が変わると一から説明し直さなければならないことがあります。

だからこそ、定期報告書の中にある「事情説明」の欄や上申書には、「なぜこの支出が必要だったのか」「どういう事情でこの財産が減っているのか」を、誰が読んでも分かるように、客観的な文章で詳細に記録しておくことが重要なのです。

成年後見人の定期報告に関するよくある質問(FAQ)

Q. 定期報告の必要書類は何ですか?

A. 「後見等事務報告書」「財産目録」「収支状況報告書」の3点に、裏付け資料として「通帳の全ページコピー」「領収書のコピー」を添付するのが基本セットです。報酬を受け取りたい場合は「報酬付与申立書」と「事情説明書」も同時に提出します。詳細は記事冒頭のチェックリストをご覧ください。

Q. 初回報告と定期報告は何が違うのですか?

A. 初回報告は、後見人に就任した直後(原則1〜2ヶ月以内)に「就任時点の財産の全容」を裁判所に報告するもので、財産の洗い出し(口座・不動産・保険の調査)が中心です。定期報告は、その後毎年1回「1年間の収支と財産の変動」を報告するものです。初回報告の財産目録が、以後の定期報告の「スタート地点の残高」になります。

Q. 領収書をうっかり紛失してしまった場合、どうすればいいですか?

A. 「出金伝票」や「理由書」を作成して代用します。例えば、自動販売機でおむつを買った場合や、電車代など領収書が出ない交通費の場合は、100円ショップで売っている「出金伝票」に日付と金額、用途を書いて代用します。もし高額な領収書を紛失した場合は、購入履歴(クレジットカード明細など)を添付し、事情を記載した理由書を添えて提出すれば、大抵は認めてもらえます。

Q. エクセルで収支を計算したら、通帳の残高と「数円〜数百円」どうしても合いません!

A. 発狂する前に、もう一度「利息の入金」と「銀行の手数料」を確認してください。残高が合わない原因の99%は、通帳に半年に1回つく「数円の受取利息」の記入漏れか、ATMで引き出した際の「110円の時間外手数料」の記入漏れです。それでも合わない使途不明金が出た場合は、無理にごまかさず「原因不明の差異(立替金で自己負担)」として正直に報告し、裁判所の指示を仰いでください。

Q. 忙しくて、指定された報告月に提出できそうにありません。ペナルティはありますか?

A. 無断で遅延すると、最悪の場合は「後見人の解任」に繋がります。無断で期日を破ることは、裁判所からの信用を完全に失う行為です。少しでも遅れそうだと分かった時点で、「必ず期日前に」家庭裁判所へ電話をし、事情を説明して提出期限の延長をお願いしてください(※正当な理由があれば柔軟に対応してくれます)。なお、毎年の報告時期そのものを変更したい場合は、本文で解説した「上申書」による変更が可能です。

Q. 報告を提出した後、裁判所から何も連絡がありません。大丈夫でしょうか?

A. 「便りのないのは良い知らせ」です。家庭裁判所は、提出された報告書に問題がなければ、受領の通知すら送ってこないのが通常です。不安な場合は、追跡番号で到着を確認したうえで、担当書記官に電話で「無事に届いていますか?」と確認すれば、精神的ストレスが激減します。

📱 本人の財産管理と並行して、自分のデジタル終活も
通帳・財産目録を1円単位で整理していると、自分自身の資産の把握も気になってきます。スマホ・ネット銀行・暗号資産の整理方法をまとめました。
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まとめ:日常のリズムに組み込めば「定期報告」は怖くない

成年後見人としての定期報告は、ご本人の財産と命を守るために絶対に避けては通れない最重要ミッションです。

領収書のナンバリング、通帳の記帳、1円単位での収支の把握……。

文章で読むと「なんて面倒な制度なんだ」と絶望するかもしれません。実際に、面倒くさいです(笑)。

くじら99

しかし、ここで一つ救いのお話をします。

定期報告の作業は、1年やって「自分の生活のリズム」に組み込んでしまえば、2年目以降は劇的に楽になります。

「毎月末の土曜日は、通帳を記帳してエクセルに入力する日」と自分の中でルール化してしまえば、報告月に行うのは「印刷してレターパックに詰めるだけ」の作業に変わります。

むしろ、私が経験した「不動産売却の手続き」や「その後の被後見人の確定申告」「突然の介護保険の負担割合増による資金ショート」といった【想定外のイレギュラー対応】の方が、よっぽど精神的にも体力的にも地獄でした。

くじら99

成年後見人という役割は、プレッシャーとの戦いです。

でも、その重圧の中で親族を支え続けているあなたは、本当に立派な仕事をしています。決して一人で抱え込まず、裁判所や専門家、施設のスタッフをどんどん頼って、自分自身の生活も大切にしてくださいね。

さて、ご本人Aさんの体調も、年齢とともに少しずつ悪化してきました。

今後は、財産管理だけでなく「介護施設やケアマネージャーとのやり取り・医療同意」といった、よりデリケートな身上保護の対応が頻繁になっていきます。だんだんと、命に関わる緊張感が増してきます。

もし皆さんの親御さんも、認知症の進行や病気によって「今の施設ではこれ以上みられません」と急に言われたらどうしますか?

働きながら、平日の日中に自力で次の施設を一から探すのは、本当に不可能に近いです。有給休暇を使い果たす前に、こうしたプロの無料相談サービスを頼るのが、家族としての最大の防衛策になります。

次回のブログでは、その「介護現場でのリアルな後見人の葛藤」についてお話しします。

くじら99

是非ご覧ください。ではまた!

※当サイトは実体験に基づく情報提供であり、法的なアドバイスを行うものではありません。個別具体的な定期報告の手続きや書式については、必ず管轄の家庭裁判所へご確認ください。

毎年の定期報告、正直しんどいですよね

この報告義務は法定後見が続く限り毎年終わりません。私も3年間、Excelと領収書に追われました。
もしご自身やご家族の「次の備え」を考えるなら、家庭裁判所の関与なしで財産管理ができる家族信託という選択肢があります。判断能力があるうちにしか契約できない制度です。

▶ 家族信託とは何か・誰に頼む?手続きの流れと費用をわかりやすく解説

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